駄目だ駄目だと、警報が頭ん中で鳴り響く。









兎に角駄目なのだと自分に言い聞かせる。アイツは男で後輩で生意気で面倒で俺が愛してやまない、人間。

「あれ?サソリ先輩じゃないっすかァ!どもー!」
「…飛段」
「今日部活じゃないんすかあ?デイダラちゃんならとっくに美術室に、」
「サボり」
「あーなるほど」

これっすかあ?と言い小指を立て怪しげな笑みを浮かべる飛段に、サソリは眉を潜めた。前から飛段の自分を馬鹿にしたようなその態度がどうも癪に触る。

「てめえには関係ねえ」
「ゲハハハッまあ確かに関係ねえっスね」
「………何だよ」
「ん?」
「さっきからガン見しやがって」
「サソリ先輩かっこいいからつい見とれちゃうんですよォ」

その嘘丸出しの発言にサソリはとうとうその場にいるのが耐えきれなくなり廊下を歩き出す。飛段はサソリの反応に軽く笑ったあと、彼の背目掛けて問いかける。

「ねえサソリ先輩」
「………」
「彼女さんのこと、好き?」

飛段からの問いにピタッと立ち止まりサソリ。振り返ると、視界に入るのはポケットに手を突っ込み先程と同じ笑みを飾っている飛段。桃色の瞳はサソリを挑発しているかのようにギラリと光っている。

「何が言いたい」
「そのまんまの意味っスよ」
「…彼女なんだから好きに決まってんだろーが」
「その人を好きじゃなくても彼女に出来るし、他の誰かを好きでもソイツを恋人に出来ねえことありますよね」
「………」
「俺は好きな奴を恋人にしてえなあ」

サソリは最後の飛段の願望を聞き終える前に再び歩き出す。静かな廊下に響くのはサソリの足音だけ。彼の行き先にいる彼女は待ちわびていることだろう。愛しの恋人が自分の元にやってくるのを。

「好きじゃねえのに、何で付き合ってんスか、サソリ先輩」

当たり前と言えば当たり前だが、飛段の小さな問いかけが、サソリに届くことはなかった。









後輩はかわいいなんて誰が言った(ただただ俺を苦しめるだけじゃねえか)


後輩はかわいいなんて誰が言った
ここだけの話、実はサソリ先輩もデイダラが好きだったりします。





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テーマ「人外ファンタジー」
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