前向きすぎるくらいが、ちょうどよかったりする。









「ハンデがでけえんだ」
「確かにそうかもしれない」
「やっぱり小南先輩もそう思うだろ?」
「でもそんなこと今更気にすることなのか?」
「今更じゃねえ、うん」
「………」
「ずっとずっと、この事実だけを糧に、やってきたんだ」

腕に顔を埋め弱音を吐く可愛い後輩に、小南は苦笑を漏らす。これは相当傷を負っているかもしれない。普段の彼はこれくらいで折れるような人間ではないのだから。

「どうした?デイダラ」
「………」
「随分と弱気じゃないか」

小南の問いに対して、デイダラからの返答はない。

静まり返った教室に一人ぽつんと取り残されたデイダラを小南が見かけたのは、数十分前のこと。放課後は決まって美術室に入り浸っているはずの彼が此処にいるのは極めて珍しいことだ。声をかけると、案の定、例の病で心底疲れきっているようだった。

「サソリ先輩、今日愛しの彼女さんとデートだってさ」
「…そうか」
「わざわざそれをオイラに言ってくんだぜ?笑えるだろ?」
「………」
「あー…マジでバカみてえ、オイラ…」

自分を馬鹿だと傷つけるデイダラに小南は微かに目を細める。馬鹿だと嘲笑しているくせに、その瞳は何故潤んでいるのだろうか。

「小南先輩」
「?」
「オイラはサソリ先輩への恋にハンデがあって良かったって思う」
「………」
「年齢が違うこと。同姓であること。オイラと先輩の芸術には相反するものがあること」

デイダラは丁寧に丁寧に言葉を紡ぎ出す。彼の伏せられた瞳が写すのは、言葉に合わせて順番に折られていく指。

「それと」
「………」
「先輩に、恋人がいること」
「…デイダラ」

今にも溢れ出しそうな涙を決して流すまいとデイダラは歯を食いしばる。小南はもう一度デイダラ、と名を呼んだが彼は大丈夫と繰り返す。

「これだけハンデがあればオイラはこの恋が叶わないのを、ハンデのせいにすることが出来る」
「………」
「ハンデがあって良かったって思わねえか?うん?」
「…もどかしいな」
「?」
「お前らの距離は本当に、もどかしい」

優しい、けれども少し困った笑みを浮かべる小南にデイダラは目を見開く。

サソリとデイダラの距離は決してもどかしいものなどではない。いらいらするものでも、じれったいものでも、はがゆいものでもない。決して交わらぬ平行線に近いものだ。だが小南ははっきりと、もどかしいと言った。

「小南先輩…」
「何だ?」
「…ありがとう」
「………ああ」

小南が発したもどかしいは同情の言葉ではない。

オイラの背を押す最高の応援歌だ。









もどかしい差(ハンデを大きくするのはもうやめようか)


もどかしい差
よく意味がわかりませんと思った方、大丈夫です。それが普通ですよ^^(説明しろよ)




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