また、押し殺した。









「聞いたぜ、でえだらあ」
「うん?」

ドスの効いた声と共に美術室に現れたサソリ。当番であるデイダラは絵の具で汚れた流し台を掃除している最中であるが、眉間に皺を寄せた彼の顔に自然と後ずさる。

「てめえでーだらのくせにユイちゃんふったらしいなあ」
「は、はい?」
「ふざけんなよでーだらのくせに図に乗ってんじゃねえ」
「え?ちょっサソリ先輩オイラ何が何だかわか」
「とぼけんな。てめえこの前美少女ユイちゃんふっただろ」
「あーそういえば…」
「そういえば、だと?」
「べっべべべ別にオイラが誰をふろうと先輩には関係ねえだろ!てか先輩彼女いんじゃねえか!うん!」
「うるせえ」
「いてえ!」

ガツンと思い切り脳天に拳を当てられデイダラは声を上げる。サソリの怒りの要因は恐らくついこの間告白され否応なしにふった件で間違いないだろう。だからといってサソリが怒る意味がわからない。

「何だよもう先輩意味わかんねえ!」
「デイダラのくせに生意気なのが悪い」
「生意気って!オイラが誰と付き合うが付き合わまいがオイラの勝手じゃねえか!うん!」
「ああぶっちゃけどーでもいい」
「ちょっ少しは関心持て!」
「だがユイちゃんふるなんてな」

ユイちゃんというのはあの美少女のことか。そういえば飛段も大絶賛していた気がする。確かにふるのは勿体無かったかもしれない。だけど仕方ないじゃないか。



今のオイラは、アンタしか見えねえんだ。



「お前誰か好きな奴いんのか?」
「………え?」
「じゃなきゃあんな美少女普通ふらねえだろ」
「好きな、人…」
「いんのか?」

サソリの真っ直ぐな瞳で見つめられ、デイダラは目のやり場に困る。それにその質問にはどう返せばいいかわからない。

出しっぱなしだった水道の蛇口を捻り、デイダラはゆっくりと息を吐く。こんなところで押し殺してきたこの想いを暴かれるわけにはいかない。

「…いない」
「本当にいねえのか?じゃあ何でユイちゃ」
「だけど」
「?」
「忘れられない人なら、いる」

忘れられないのか、忘れたくないのか。それとも両方か。

「引きずってんのか?」
「ううん。でもいいんだ」
「…何が?」
「オイラは今、幸せだから」
「………へえ」

大丈夫大丈夫大丈夫。だってオイラはまだ貴方の隣で笑っていられるんだから。幸せを噛み締める瞬間が確かに存在するんだから。だけど、誰か教えてくれ。

オイラはあと何回、この想いを殺せばいい?









ずっと一緒にいたい(そのためなら幾度でもこの想いに刃を向ける)


ずっと一緒にいたい
全国のゆいさんごめんなさい。だけどゆいって可愛い名前だなあって思うんです><






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