生まれたこの日より死すあの日を、どうか。









「たんしび?」
「そう誕死日」
「…漢字でどう書くんだ?」
「誕生の誕に死ぬの死、日付の日で誕死日」
「………造語か?」
「違え!オイラが考えた歴とした日本語だ!」
「それを造語って呼ぶんだよ馬鹿が」

呆れて溜め息をつくサソリに反して、デイダラはニコニコと微笑んでいる。

この笑顔には裏がある。そう確信したサソリは仕方なく伏せていた顔を上げ、隣に座るデイダラへと視線を向けた。

「それで?その誕死日ってのは何なんだ?」
「言葉のとおりオイラが死ぬ日のことだ。生まれた日が誕生日なら死ぬ日は誕死日でいいじゃねーか!うん!」
「…デイダラ。命日って言葉知ってるか?」
「そこで旦那に一つ頼みがある」
「(人の話を聞け!)」

デイダラは人差し指を立てながら、ずいっとサソリの前に手を突き出す。先程からの支離滅裂なデイダラの発言がどうも気にかかるが、この状況を打破するためには彼の言葉を聞かざるを得ないらしい。

サソリは突き出された手を押し返し頼み?と問う。サソリらしからぬ素直な返しにデイダラは一瞬目を見開いたあと、満足した笑みを浮かべる。そしてゆっくり、静かに、言葉を口にする。

「オイラの誕死日を、毎年祝ってくれねえか?」








「命日を祝えと?」
「ああ。誕生日なんてどうでもいい。ただ自分の芸術をこの世に刻む誕死日だけは誰かに祝ってもらいたい。だとよ」
「意味がよくわかりませんね。命日を祝えだなんて」
「俺も最初は理解できなかった。だがイタチ。こう言えばわかんだろ?」
「?」
「今日はあいつの誕生日だ」
「………なるほど」

口角を上げ薄く笑うイタチに合わせるようにサソリも笑う。

デイダラからの意味深発言を受け少しばかり悩んでいたサソリであったが、すぐにその意図を理解することが出来た。話を聞いたイタチもサソリと同じように理解したようである。

「まるでデイダラは貴方に誕生日を祝ってもらいたいように聞こえますね」
「だろ?」
「誕生日じゃなく命日を祝えだなんて。天邪鬼としか言い様がない」
「イタチ。俺はどちらを祝うべきだと思う?」
「大切なのはどちらを祝うべきではなく、どちらを祝いたいかですよ」
「………」
「そう考えれば簡単に答えは出ると思いますけど」
「生意気なこと言ってんじゃねェ」
「デイダラには敵いません」

イタチの最後の一言にサソリはまた笑みを浮かべたあと、その場をあとにする。目的地は言わずもがな、愛しい彼の部屋。扉を数回ノックすると、ひょこりと現れる金髪。髷を結んでいないのは今日任務が入っていないためであろう。

「旦那?どうしたんだい?」
「いいから部屋へ入れろ」
「相変わらず偉そうだな、うん。せっかくのオイラの休日を、」
「デイダラ」
「うん?」
「おめでとう」
「………え?」
「誕生日、おめでとう」

デイダラの目が丸くなる。そして瞬時に扉を閉じようとするが、サソリの足が挟まっているため閉めることは出来ない。その態度に青筋を立てたサソリは足だけでなく手も使いその扉を抉じ開けた。

「うおっ!」
「何しやがんだてめえは!!!」
「だ、だってサソリの旦那がッ」
「ああ!?」
「旦那が、おめでとうなんて言うからいけねえんだッ!うん!」
「言っちゃ悪ィのかよ」
「オイラは、望まれて生まれてきたわけじゃ、ない」
「………」
「だから、おめでとうなんて、言わないでくれ…」

デイダラはふらふらと覚束無い足取りで後退り、情けなく尻餅をつく。顔を見られたくないのかこちらを向こうとしないデイダラ。サソリは顔を手で覆いお得意の溜め息をついたあと、デイダラの前に腰を下ろした。

「なあ。デイダラ」
「………」
「お前が誕生日を祝えねえのと同じように、俺はお前の誕死日を祝えねえ」
「!?」
「望まれて死ぬわけじゃねえんだから」
「………」

ぽたりぽたりぽたり。床に染み込んでいく水滴を、サソリは気付かぬフリをする。そっとデイダラを抱き締めると、抑えきれなかった嗚咽が聞こえ始めた。

「デイダラ」
「………ッ」
「誕生日、おめでとう」

望まれて生まれてきたこの日には、祝う価値があるのだから。








誕生日おめでとう誕死日さようなら(をありがとう)



何とか間に合いました誕生日小説orz 毎度のことながらワンパターンなのは気にしないでください^^とにもかくにもデイダラ誕生日おめでとう!




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