「ラスボス」
それがあの人のふぁーすといんぷれっしょん。
「先輩」という存在は大嫌いだ。高が一年早く生まれたくらいで威張ってんじゃねえ。
美術部に入りたかった。だけど少し躊躇っていた。部活に「先輩」は付き物だから。
「一年で――――」
「初めまして三組の――」
「中学の頃も美術部に所属していたので今回も――」
「これからよろしくお願いします――」
逃げてはいけないと思った。あくまで「先輩」は嫌いなのであって苦手なわけではない。だから「先輩」から逃げる必要もない。大嫌いな「先輩」のために大好きな美術を投げ出すのはどうしても許せなかった。
そうして美術部に入部して初めての部活動の日。デイダラの横に並んでいる他の新入部員が、順番に自己紹介をしている。
「じゃあ、次の一年生お願いします」
部長らしき人物がデイダラへと自己紹介をするように促す。ざっと部員を見回すと、どの生徒の顔にも困惑が見える。きっとデイダラの外見に戸惑っているのだろう。
「(何だよコイツら。あからさまに嫌そうな顔しやがって。建前上『先輩』なんだから『先輩』らしくいろよ。だせえな、うん)」
「えっとそこの君、自己紹介を」
なかなか始めようとしないデイダラにまた部長らしき人物は促す。デイダラは皆に気付かれぬよう溜め息をついたあと、前の新入部員と同じような事を口にした。
最後にお決まりの宜しくお願いしますを言ったあと、軽くお辞儀をした。顔を上げたとき目が合ったのは、一番後ろで偉そうに座っている赤髪。思えば彼だけ、デイダラへと向ける視線に困惑が見られなかった。
「(なるほどな。アイツがこの部のトップか)」
確信を得たデイダラは同時に決意する。あの「先輩」を負かしてやろう、と。あんな奴に美術も喧嘩も負ける気がしない。
そして他の生徒が帰ったあと、デイダラは赤髪を呼び出し話を切り出す。一言目は、これだ。
「オイラに只の『先輩』は要らない」
微かに赤髪の眉間に皺が寄る。彼は不審物を見るような目でデイダラを見つめていた。
「………………は?」
数秒空けて返ってきた言葉。無理もない。今日初めて会った人物にこんなことをいきなり言われてもどう対処すればいいか戸惑うのは当然だ。
そしてこの一回のやり取りから約五分後。デイダラは赤髪、後にサソリと名乗るその男に、喉元に絵画を突き付けられることとなる。
後輩は可愛がれ!(お前はオイラの先輩じゃねえがオイラはお前の後輩だ!うん!)
後輩は可愛がれ!
なんて理不尽なのデイダラさん(笑)