好きでいられず、嫌いにもなれない。









好きな人に好きな人がいても、オイラはきっとそう簡単に諦めない。

じゃあ、好きな人に彼女がいて、好きな人が自分と同じ男だったら?

「好きです。一年の頃から、ずっと気になってて」
「………」
「付き合ってくださいッ」

震える言葉。透き通った肌。大きな瞳。高い鼻。潤った唇。小柄な体格。完璧ともいえる容姿をもった少女が、デイダラの前に立ちはだかる。けれども今のデイダラは彼女など眼中にない。

「(どうしてこの子はオイラを好きになってくれたのに、先輩はオイラを好きになってくれないんだよ)」
「デイダラくん?」
「あ…うん」
「え?それって、どういう意味?」
「あっ違う。うんって言うのは、ちげえ。ごめん」
「謝るってことは、駄目ってこと?」
「…うん」
「そう…」

階段の踊り場から廊下へと向かって立ち去っていく少女。ちょっと勿体無いことをしたかと思ったが、仮に付き合ったとしても後悔するに違いない。

「も、もったいねえええー!」
「うおっ!飛段!いつからそこにいたんだよ」
「デイダラちゃんさっきの子学年でトップ5には入る可愛い子ちゃんだぜ!?」
「あーそうかよ」
「付き合うだけ付き合ってみりゃいいじゃねえか!好きになるかもしんねえしー!」
「…オイラは好きになるためなんかに付き合いたくない、うん」
「はあ…そんなんじゃ一生彼女出来ねえよ」

額に手をあて呆れる飛段を無視して、デイダラは軽い足取りで階段を下り始める。

「待てってデイダラちゃん。俺はデイダラちゃんのためを思って言ってるんだっつーの!」
「余計なお世話だっつーの」
「じゃあ今回で何回目だよ!」
「はあ?」

声が響く場所にもかかわらず、飛段はデイダラの背後から声を張り上げる。そのせいか足を止め振り向いたデイダラの表情は、不機嫌そのもの。

「何回目って、何が?うん」
「高校入って何回フった?」
「…そんなの覚えてねえ」
「覚えてねーほどフってるってことだろ?」
「………」
「なあデイダラちゃん。一体いつまでこんなこと続ける気だよ」

「俺がいちいち口出すことじゃねえかもしんねえけどよォ」

「このままずっと好きでいたって、辛いだけだ」

遠回しに、だがしかし真っ直ぐに、飛段はデイダラに諭す。

デイダラは飛段が言いたいことは全てわかっている。わかっているつもりになっていると言う方が正しいかもしれない。

「…わかってる」
「わかってねえよ」
「わかってるって」
「わかってんなら何でどうにかしようとしねえんだよ!!!」
「うるせえな!!!オイラだってどうにかしてえんだ!だけど、だけど…!」
「!?!?」
「だけど、もう、どうすりゃいいか…」

語尾を言い終えるか否かで、デイダラは顔を片手で覆い俯いてしまう。さっきまでのお喋りが嘘のように、飛段はそれから一言も喋ることが出来なくなった。

飛段の瞳にデイダラのその姿が、ひどく小さく映ってしまったのだから。









背中を追うのはもう嫌だよ(お願い早く振り向いて)






背中を追うのはもう嫌だよ
デイダラさんのお友達役が飛段さんしか思いつかないんです。





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