この愛が尽きるのはいつだろう。









「ゆいごんじょー!」
「………」

長かった任務に、漸く昨夜終止符が打てた。幾ら傀儡であるとはいえ疲れないわけではない。肉体的というより精神的に疲労を感じていたサソリは、正午を過ぎてもまだ布団に包まっていた。

そう、もう一眠りするかと思っていたときのことだ。あのバカの騒ぎ声が聞こえたのは。

「旦那!起きろ旦那!」
「………」
「だーんーなー!さーそーりーのーだーんーなー!」
「………出て行け」
「オイラ今からすっげー大事なこと言うから聞いてくれ!」
「……出て行ってくれ」
「いいか!一字一句聞き逃しちゃ駄目だぜ!うん」
「…出て行ってください」

サソリはさっきよりも深く布団を被るが、それはデイダラの手によって剥ぎ取られてしまう。否応無しに起こされてしまったサソリはだるそうに起き上がる。寝癖がついた頭を無造作に掻き、いつもより数倍気怠そうな瞳はデイダラに向けられた。

「おはよう旦那!」
「………」
「すげえ寝癖だな、うん」

常日頃からサソリは思う。どうして俺はこんな奴と、ツーマンセルを組み、しかも恋人同士なのだろうか。

「それより旦那!オイラこれから大事なこと言うから聞いてくれ!」
「デイダラ。昨日俺らがアジトに帰ってきた時刻覚えてるか?」
「昨日?夜中だったよな、うん」
「夜中じゃねえよ5時だ5時!わかるか?それからお前はすぐ爆睡したんだろーが俺はリーダーに任務の報告したり傀儡の手入れしてたから結局横になれたのは9時頃なんだよ!ああ?どうせバカなお前にはこれが何を意味するかわからねえだろーがな、簡潔に言えば俺はっ」
「オイラの芸術が爆発だから爆睡とかけたんだろ?わかってる」
「(何もわかってねー!)」
「オイラは今日旦那に遺言状を言いにきたんだ、うん」
「はあ?」

何一つ理解していないデイダラに為す術なくサソリはがくんと肩を落とす。するとまたデイダラはひょうきんなことを言い出した。

「聞いてろよ旦那!ゆいごんじょー!」
「いやいや待て待て」
「何だよもう!なかなか進まねえじゃねーか!うん!」
「その遺言状ってのは何だ」
「遺言状は遺言状だ!旦那まさか遺言状知らねーの?」

だっせー!なんて言いケラケラとデイダラは笑い出す。

「遺言状はわかる。誰の遺言状だ?」
「誰って、オイラの」
「(………ダサいのはお前だ)」
「オイラの遺言状なんだからオイラが読むのが当たり前だろ?」
「…じゃあ何で遺言状なんて読む気になったんだ?」

デイダラの手に握られているのは、きっとその遺言状なのだろう。

「オイラも旦那も、暁にいる以上ってか忍でいる以上、いつ死ぬかわかんねえだろ?」
「………」
「旦那は永遠かもしれねえけどオイラは一瞬だ、うん」
「だから遺言状か?」
「遺言状ってのは死ぬ前に好きな人に宛てる手紙だからな」

それじゃあラブレターだ。というツッコミは今は入れておかないことにする。デイダラがデイダラなりに考え、サソリへと残してくれた大切なものなのだから。

「聞いてくれ、旦那」
「ああ」
「『遺言状』」
「………」
「『芸術は、』
「………」
「『爆発だ!!!』」
「………」
「………」
「………まさか、終わりか?」
「うん」

サソリはデイダラから遺言状を引っ手繰り、内容を確認する。しかしデイダラの言うとおりそこには「遺言状」と「芸術は爆発だ」の2文しか書かれていなかった。

「…でーだらあ。殺してやっからこっち来い」
「なっ何でだよ!オイラまだ死にたくねー!」
「遺言状も書けたし準備万端だろーが。ほら来いよ」
「やだやだやだ!旦那目ぇ据わってんじゃねえか!うん!」

逃げ回るデイダラをサソリは座ったままチャクラ糸で捕まえ、背後から腕で首をしめる。デイダラは腕を叩きギブギブと繰り返すが、サソリはなかなか放そうとしない。

「ちょっ旦那!苦しっい…!」
「デイダラ」
「うん?」
「…好きだばーか」
「なっ…ばかじゃねー!」

後ろから耳元で囁いてやればデイダラの耳は真っ赤に染まる。腕を放すとデイダラはすぐさまサソリに振り向く。そして照れ隠しのようにサソリの唇に噛み付き、そのまま抱きついてきた。その態度がまたおかしくて可愛くて、サソリは笑った。






ばーか(遺言状は必要ない)(そこに愛を刻むのなら、今の俺に一瞬の愛を)






04.ばーか

素で遺言状を2文で終わらせるデイダラさんも可愛いけど、故意に2文で終わらせてるのも良いかもしれない。言葉になんか表せないこの愛だけは永遠に、なんて願ってくれてたら嬉しい。なんて言ってますが、アホなデイダラさんが一番書きやすくて好きだったりします(笑)




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