その一言は何よりも強くて、何よりも痛いんだ。









「いい加減にしろ、デイダラ」
「………」


「命令だ」


そのたった一言にズキンと胸が痛む。

サソリの旦那はいつもそうだ。気に食わないことがあったり事が上手くいかなかったりするとすぐにそうやって、命令だ命令だ命令だって。その一言に頼りすぎてるサソリの旦那も、縛られてるオイラ自身も、許せない。

「何だよ、それ」
「………」
「命令命令って、旦那はいっつも、それだな」
「何だと?」
「そんなにアンタは偉いかよ」
「てめえ…」
「いつまでも言いなりだなんて思ってんじゃねえ!!!うん!」
「デイダラっ!」

喝!と怒声を放ち爆発を起こす。造られた鳥で羽ばたき、その場から出来るだけ遠くへ逃げる。逃げて逃げて、とにかくサソリから遠くへ行って。



そして、どうする?



「違う!ちげえ!ちげーんだ、こうじゃない、オイラは、」

ただ、そんな簡単にまとめてほしくなかっただけ。命令だなんて言葉で、意志を生き様をプライドを、否定してほしくなかっただけ。

「何が違うんだ?」
「っ!?!?」
「あの爆発、ヒルコがなかったら俺死んでたな」

背後にいたのはサソリ本体。背中合わせで鳥に乗っかっているため表情は掴めないが、絶対に怒ってるに決まってる。

「それで?何が違うんだ?」
「………」
「俺は天才であってもエスパーじゃねえから、話さなきゃわからねえ」
「………旦那はさ」
「………」
「オイラにいっつも、命令だって言うじゃんか、うん」

夜空のお散歩。そんな雰囲気ではないが、大きな丸い月が二人を照らす。

「命令は大切なのはわかる。わかるけど!オイラの!その、考えってのを」
「芸術は爆発だろ?」
「そうそうそれそれー!うん!って違う!」
「お前ノリツッコミ上手いな」
「そうじゃねえ!オイラにはオイラなりの、」
「命令は命令だ。お前がなんと言おうと俺はそれを繰り返す」
「………」


「お前を、死なせないためにな」


最後のサソリの一言にデイダラは後ろを振り向く。風が吹きデイダラの金髪もサソリの赤髪も同じ方向になびく。同じように振り向いたサソリの横顔の口角は、少しだけ上がっていた。

「旦那…」
「帰るぞ、デイダラ。アジトに向かえ。命令だ」
「それもオイラを死なせないためのもの?うん?」
「知るかよ」
「……ありがとな、旦那」

鳥は旋回しまた羽ばたく。さっきよりも月が綺麗に見える、デイダラはそんな気がした。









命令だ(オイラはそれを愛と受け取る)






02.命令だ

サソリの旦那にお見事に騙されてるデイダラさん。でもほら早死にするタイプなんだし有難い!←






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