今となっては、だぞ!うん!!!









「あんた本当の本当に!G大の美術専攻に行ってんのか?」
「ああ」
「ってことはあんた美術すっげー出来んのか?」
「当たり前だ。俺は天才って言われてんだぜ?」

ニヤリという効果音が似合う笑みを浮かべるサソリ。さっきまでならその笑顔も気持ち悪いの一言で簡単に片付いたが、今は違う。デイダラにとってG大の美術専攻に通う者は、言い過ぎかもしれないが、神に近い存在なのだ。

「証拠見せてやるよ。ほら」
「ん?何だい?」
「学生証。暗くてあんま見えねえかもしれねえが、俺が現役生ってこともわかるぜ」

確かに暗くてはっきりとは見えないが、G大学や美術専攻の文字が確かにそこにはある。こんな身近にこんな凄い奴がいたなんて。デイダラは呆気に取られていた。

「というより、さっきから何でそんなに俺の学歴にこだわる」
「いや別にオイラ学歴にこだわってるわけじゃねえ、うん」
「じゃあ何だよ」

返された学生証を財布へとしまいながら、サソリはちらりとデイダラを見る。デイダラは落ち着きない素振りを見せたが、何を決心したのかバッと冊から立ち上がりサソリの目の前に立った。

「何だ?」
「オイラの夢なんだ」
「夢?」
「G大の美術専攻に行くのは、オイラの夢なんだ!うん!」

言い切った!まさにそんな顔をしているデイダラにサソリは眉を潜める。それもそのはず、サソリはデイダラ自身に興味があるのであり、デイダラの夢なんかどうでもいいことなのだ。

だがしかし驚いた。こいつも自分と同じ趣味を持っていたとは。

「へえ。お前も美術好きなのか?」
「オイラ美術と体育と音楽は大好きなんだ」
「あー…そんな顔してる」
「………どんな顔だよ」
「それで?G大に行きてえって思ってんなら、それなりに努力してんのか?」
「………」

急所を突かれたようなサソリの言葉にデイダラは口を閉ざした。そう、自身が言った通りG大に進むことはあくまでも「夢」なのだ。夢は夢で終わるものが多い。デイダラにとってもそれは同じこと。

「何だよ。だんまりか?」
「…オイラ就職するから」
「あ?」
「高校出たら就職するんだ、うん」
「さっき言ってた夢はどうした?」
「夢は所詮夢のまんまだ」

それっきり黙りこんでしまったデイダラにサソリは軽く呆れる。事情はよくわからないが、夢を夢のまま終わらせなければならない理由でもあるのだろう。

「金銭面か?」
「へ?」
「お前の夢を夢のまんまにしなきゃならねえ理由は、金に関わることかって聞いてんだ」
「まあ、そんなとこ」

そう言ってデイダラはまた俯いてしまう。サソリは立ち上がってデイダラの横を通り過ぎ、ブランコに足をかけそのまま立ち乗りをし始めた。サソリがブランコを揺らす度に、ギイギイという音が、二人の沈黙に鳴り響く。

「……G大は国立だ。他の美術の私大や専門に比べたらはるかに学費は安い。それに奨学金だってある」
「………」
「美術で生きていくって思うならG大がいちばんだ。まあその分入るのには苦労するが」
「………」
「それに今は不景気で就職難だぜ?受け入れてくれる会社は限られてくると思うがな」
「でもオイラは就職して金を稼がなきゃなんねーんだ!!」

サソリの言葉をじっと黙って聞いていたデイダラは振り返り、思いのままに怒声を発し始めた。

「オイラん家は両親が死んじまってお姉一人で働いて養ってくれてる!もうこれ以上お姉に迷惑かけらんない!オイラは自立しなきゃなんない!好き勝手に生きてなんかいけない!夢だの何だの言ってる場合じゃ」
「それ、嘘だろ」
「………は?」

冷たい風がブランコを揺らし、冷たい眼差しがデイダラを射抜いた。

「しなきゃなんないなんないなんないって、お前はそればっか」
「そんなことっ」
「俺には才能があります。夢を叶えることも出来ます。だけど家庭の事情でそうすることができません。なので仕方なく選んだ就職の道を進みます」
「………」
「俺にはそう聞こえる。G大に進むにしても就職の道を進むにしても、立派な夢を持っている奴はたくさんいる。そいつ等にとってお前は、失礼極まりない存在だ」
「……じゃあ、」
「あ?」
「じゃあ、オイラは一体どうしたらいいんだよ…!」

溢れ出した涙を隠すためデイダラはその場に屈んでしまった。ブランコから下りたサソリは、屈んだデイダラの前に同じく屈み込む。そして象徴的な髷を引っ張り、無理矢理顔を上げさせた。

「ちょっ何すん、」
「不細工な面だな」
「なっ…」
「仕方ねえ。俺がお前の夢を叶えてやる」
「……は?」

思考回路はショート寸前。とはまさにこういう状態である。

「何、え?」
「お前理解力乏しいな」
「う、うるせえ!うん!」
「話からして金に困ってるみてえだし、勿論予備校に通う金もないんだろ?」
「……うん」
「G大目指すにはそれなりに努力しなきゃならねえって言ったよな?予備校なんざ必須条件だ」
「だからオイラには無理、」
「だから!俺がお前の美術講師になってやる」

唖然としているデイダラに奴はまたニヤリと笑い、涙で濡れた頬に軽く唇を落とされた。

「ただし、俺の恋人になるって条件付きだけどな」

もうオイラどうすればいいかわかりません。









奴はオイラの夢を叶えてくれるらしい(青くもなくポケットもなく似ているのは背丈くらいだ)








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