オイラの話を聞いてくれっ!









二人が着いた場所はコンビニからさほど遠くない公園だった。定番といえば定番の場所である。

赤髪がそこのブランコに腰かけたのを見て、デイダラは自転車を脇に止めた。どう話を切り出そうか考えていると、先に口を開いたのは相手だった。

「俺が言いたいことは昨日と同じことだ」
「え?」
「俺と付き合え。それだけだ」

かあっと顔が火照った気がしてデイダラは視線を泳がせた。昨日も思ったが、こう真っ正面から告白(と呼べるか定かではないが)されると誰でも多少は照れてしまう。

「オイラはあんたとは、付き合えない」
「何でだ?」
「何でって…そりゃオイラは男だしあんたも男だろ?だから」
「そんなくだらねェことでこの俺の告白を断んのか?」
「くっくだらねーだと!?」

見当外れな返答。デイダラは反射的に赤髪を睨んだ。赤髪はデイダラのその行動を嘲笑う。その笑みがまたデイダラの青筋を立てた。

「大体あんた何なんだ!?いきなり現れて名乗らずに付き合えだの何だの意味わかんねーんだ!うん!」
「あのコンビニには何回も行ってたし、お前は覚えちゃいないだろーが既に数回会ってる。名前が知りてえのか?ククッ最初からそう言え。サソリだ。付き合えなんて言葉の意味のまんまだろ。お前見た目からしてかなりバカそうだが、まさかそんなこともわかんねえのか?」

ところどころ人をバカにしたような口振りにますますデイダラの怒りは増していく。というよりバカそうに見えると言っているんだから、実際バカにしているようだが。

「あんたオイラを怒らしたいのか?からかいたいのか?バカにしたいのか?」
「どれもノーだな」
「嘘つくな!オイラを騙そうとしてんのはわかってんだぞ!うん!」
「お前みたいな餓鬼騙したって騙しがいがねえ」
「な!ガキ扱いすんな!」
「嗚呼うるせえ。とにかく付き合えって言ってんだよ」
「嫌だね。オイラあんたみたいな奴ごめんだ、うん」

少しだけ付き合ってみてもいいかもなんて思ってしまった数分前の自分をデイダラは呪いたくなった。こんな奴と付き合ったってロクなことにならない。デイダラは直感的にそう思った。

「てめェ、餓鬼のくせに下手に出てりゃいい気になりやがって」
「何が下手だ!うん!めちゃくちゃ上から目線で話してんじゃねーか!」
「とにかくだ。てめーは俺と付き合うんだよ」
「はあ!?意味わかん」

いつの間にか目の前まで来ていたサソリにデイダラは戸惑うが、サソリは容赦なくデイダラの長い髪を手で払いその首筋へと噛みつく。

「あんた何やってんだ!離せっ離せって…!痛ェっ!?痛い痛い痛い!」

チクッというよりもグギッという感覚に近い痛みが首筋を襲う。あまりの痛みにデイダラは視界が滲んでいくのがわかる。サソリの舌がその傷跡を伝う度にまた激痛が走った。

「男がこんくらいで泣くんじゃねえよ」
「あんたがっ、悪いんだろ…!何しやがんだよ!」
「まあ確かに、思いっきり噛み付いたからな」

電灯の光だけで照らされた空間であるため辺りは薄暗くその傷跡ははっきりとは見えないが、きっとくっきりとサソリの歯形が残っているに違いない。

「痛かったか?」
「触んな!変態!」
「変態でも構わねえが触んなってのは無理があるな」
「って痛いって!うん!」

傷跡を親指で押すとあまりの痛さにデイダラは身体が強張る。その隙をついてサソリはデイダラの膝の裏を蹴り、ブランコの柵へと座らせた。驚いたデイダラはサソリを見上げる。と、サソリはデイダラの顎を掴み軽く持ち上げ、そのままその唇に噛み付いた。

「んっ、んんんー!」

じたばたと暴れ出すデイダラだがさっきつけた傷跡を指で抉られ、身体を震わせ大人しくなる。サソリはそれを繰り返しデイダラの舌をたっぷり堪能する。漸く唇を離したときには、二人共多少息が上がっていた。

「あっ、あんた、マジでありえねえっ、うん」
「そんなこと言いながら、案外ノリ気だったじゃねえか」
「ンなことあるかよ!ふざけんじゃねーぞ!」
「まあいい。これでやっと付き合うことになったんだしな」
「なっ何バカなこと言ってんだあんた!」

冷静なサソリに対してデイダラは落ち着きがない。所有印つけられて唇奪われて挙げ句の果てに付き合えだと?いい加減にしやがれ。

「そういえばデイダラ。お前何処の学校行ってんだ?」
「何親しげに名前呼んでんだよ!オイラあんたとは付き合わねーかんな!うん!」
「その制服からすると、この近くの公立高校か」
「人の話を聞け!」
「あと連絡先教えろ」
「誰があんたなんかにっ!」
「携帯頂くぜ」
「あっオイラの携帯…!」

あっさりとポケットから取られて赤外線で連絡先を送信させられてしまった。唖然としているデイダラに反してサソリは淡々と作業をこなす。

「あんた、どんだけマイペースなんだよ」
「仕方ねえだろ。天才芸術家なんだから」
「てんさいげいじゅつか?あんたが?」
「お前その目バカにしてんだろ?」

訝しげに見つめてくるデイダラにサソリは溜め息をつく。用が済んだのか携帯を返し、デイダラの横に腰かけた。

「あんたどう見ても学生だろ?何が芸術家だよ。てかあんたいくつ?俺より年下だろ?うん?」
「それ以上ナメたことぬかすとここで犯すぜ」
「すいませんでした」

人の首筋に容赦なく噛み付いてくるのだから何をしでかすかわからない。

「俺はお前より年上だ」
「大学生ってことか?」
「ああ。それと芸術家ってのはあれだ。俺がG大の美術専攻だからって理由からだ」
「へえG大の美術専攻ねぇ…………ってはぁああああ!?」
「うっせーな今度は何だよ。てかお前時間帯考えろ」

驚くのも無理はない。何せG大の美術専攻は、数ある美術の大学や専門学校の中でトップに位置する名門中の名門であり、そこに入れる者はほんの一握りの人間だけだからだ。

そう。
姉にも飛段にも言えなかったが、デイダラが心の底から行きたいと願っていたのがそこ、G大の美術専攻なのであった。









天才と変態は紙一重(ただしサソリに限る)









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