ぐるぐるぐる。
頭が痛くなりそうだ。






一晩考えたくらいで答えなんて出るわけがない。デイダラは謎の赤髪からの告白事件や姉と口論した進路の件を解決しようと、アホな頭をアホみたいにフル回転させた。が、結局アホなので何の糸口も見つけられなかった。

はぁ…何でオイラがこんな目に合わなくちゃならないんだ。オイラが何か悪い事したってのか?いやしてねえ!うん!

「でっいだっらちゃぁん?」
「げっ飛段…!」

前言撤回。昨夜今目の前にいるこの銀髪をぞんざいに扱うという悪い事をしました。

「ちょっと話があるんだけどよォ、面貸せや」
「ひ、飛段!今日の1限何だと思ってんだ?聞いて驚け数学だぜ!オイラすっげー楽しみにしてたんだ!うん!」
「嘘つけェ!いっつも俺と一緒に寝てんだろ!」
「ってうわ!ちょっ飛段!」

飛段は荒々しくデイダラの首根っこを掴むと教室を後にする。周りの生徒がちらちらとこちらを見ていたが、飛段は気にする様子もなく進んでいく。

騒ぐデイダラを無視して二人が着いた場所は、よくサボりに使う非常階段だった。けれど教師の死角になりそうな非常階段だが、身を屈めていなければ丸見えの場所である。いつもの癖なのか、デイダラは上から三段目辺り、飛段は少し下の段に腰かけた。

「朝っぱらから乱暴だ、飛段」
「デイダラちゃんが昨日素っ気ねー態度取るからだろ」
「……お前オイラの彼女か?」
「ちげェよばーか!何かあったんじゃねえかって心配してやったんだよ!」
「冗談だって。ありがとな、うん」

ムスッとした顔でこちらを向く飛段に礼を言うと、少し恥ずかしそうに俯いた。

「なあ飛段」
「あ?」
「あんまりばか騒ぎすんなよ」
「何の話だァ?」
「今からオイラが言うことにばか騒ぎすんなってことだ」
「よくわかんねえけど、まあ要するに騒ぐなってことか?」
「ああ」

わかったよ、と飛段は言う。デイダラは座り直すと目を閉じ小さく息を吐く。柄にもなく緊張しているのか、組んでいた指先が微かに震えていた。

「実はさ、昨日オイラ―――」








「マジかよ…」
「こんな嘘わざわざつくわけねえだろ、うん」
「まあデイダラちゃん女みてーだしわかんなくもねーか」
「失礼だなおい」
「それよかどうすんだよ。今日もそいつバイト先に来んだろ?」
「来る、と思う。でもお遊びかもしんねーし!オイラをからかってんのかもしんねーし!うん!」
「わざわざそんなことしてまでか?男が男に告るってそんな簡単に出来るもんじゃねえよ?」

座りながら横の壁に背を預けた飛段の口振りが少し変わる。合わさった桃色の横目もいつもと色が変わっていた。

嗚呼そうか。
コイツも必死な思いで角都に告白したんだっけ。

「飛段、お前…」
「その赤髪は本気だと思うぜ。まあだいぶナルちゃん入ってる感じするけどよォ」
「オイラどうすりゃいいんだ…」
「んー嫌な気がしねえんなら付き合ってみろよ。てかその前にお互いのこと知るのが先かァ?」
「つ、付き合うって…!オイラがあの赤髪とか!?」
「だって告白されたんだろ?」

確かに告白された。だがしかしちょっと待て。もし仮にあの赤髪と付き合うとする。付き合うってのは恋人同士になるってことだ。恋人同士になるってことは、うん。もちろんあの赤髪と手も繋ぐ。あの赤髪とキスもする。あの赤髪とセッ、

「ちょちょちょっ!飛段タンマ!オイラタンマ!」
「タンマって…久しぶりに使ってる奴見たぜ」
「付き合うのはありえない。ありえない、うん」
「デイダラちゃん顔真っ赤ァ」
「うるせー!それにオイラに今そんなことしてる暇ねえ!進路のことも考えなきゃなんねーし」
「はァ?進路?」

そうだ。デイダラには今姉ともめている進路の悩みもある。付き合うだの付き合わないだのそんなことを考えてる暇はないのだ。

「デイダラちゃん進路に悩んでんのか?」
「飛段は決まってんのか?」
「俺?進学」
「はあ!?その頭でか!?うん!?」
「仕方ねえだろ角都がうるせーんだからよォ!だからバイト止めて夜は角都に勉強教えてもらってんだよ」
「あ、そうだったのか」

そういえば3年になって飛段はデイダラと同じコンビニのバイトを止めた。そういう理由があったなんて知らなかった。

「話さなくてごめんな」
「大丈夫だぞ、うん。勉強頑張れよ」
「デイダラちゃんはどうすんだよ?美術すっげー出来んだし、そっち系行くんだろ?」
「オイラは就職だぞ」

しれっと発されたデイダラの言葉に、飛段は目を見開いた。

「嘘だろ?勿体ねえよ」
「全然勿体無くなんかないぞ、うん。オイラくらいの奴なんて幾らでもいるし、家のこと考えたらこれが一番なんだよ」
「姉ちゃんは何て言ってんだ?」
「猛反対」
「そりゃそうだろうなァ。お前の姉ちゃんもデイダラちゃんが本当にやりてーこときっちりわかってると思うし」
「本当に、やりてーこと?」

眉間に皺を寄せたデイダラを見た飛段はハッと軽く笑う。天を仰ぐように上を見上げると、またデイダラに向き直った。

「粘土こねたり絵描いたり自分の芸術論語ったりしてるときのデイダラちゃんって、俺にはいっちばん輝いて見えんだがなァ」
「……楽しいだけじゃやっていけねえこともあんだよ」
「でもやっていけても楽しくなきゃつまんねーじゃん」
「………」
「不可能じゃねーんならやってみた方がいいんじゃね?俺すっげーバカだけどよォ、大学行こうとしてんだからな!」

まあデイダラちゃん次第だけど、と飛段が言ったときちょうど1限の終わりを告げるチャイムが鳴った。どっこらしょっと立ち上がる飛段に合わせてデイダラも立ち上がった。

「てかそれよかデイダラちゃんはまず赤髪をどうにかしなきゃだな」
「あ、そうだった…」
「まあそう暗くなんなってェ!どうしようもなくなったら電話してこい!相談に乗ってやるぜェ」

恋人と同じことを言う飛段に心の中で苦笑しながらもデイダラはうなずく。次は国語演習だし寝れるぜェ!なんて言い笑いながら横を歩く飛段につられるようにデイダラも笑った。








持つべきものは飛段(ばかだけどバカだけど馬鹿だけど)









人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -