よし。
いざ尋常に勝負!






今まで生きてきた中で告白するのも告白されるのも、ふるのもふられるのも経験済み。なのに何故自分はこんなにも緊張しているのだろうか。

とにかくはっきり言うんだ。ごめんなさいオイラはあんたとは付き合えない。はっきり言うんだ。そうすればわかってくれる、はず。というよりわかってくれなきゃ困る。こればっかりはどうすることも出来ないのだから。

「デイダラ先輩何だか今日落ち着き無いっスねー」
「うっせートビ黙ってろ」
「うわ!酷っ!」
「いいからお前はとっとと裏で商品整理してこい!」
「えー何で俺なんスかー?先輩やってきてくださいよー!」
「つべこべ言わずやってこいって言ってんだ!うん!」
「ちょっわかりましたってば!蹴らないでくださいよ!」

ブツブツと文句を言いながらも裏方に向かったバイトの後輩で、一緒のシフトに入っているトビを送り出し、デイダラは深呼吸をする。時刻は9時過ぎ。あの赤髪が来てもいいような時間である。

早く来てほしい。そしてこの問題をとっとと解決してしまいたい。もうこれ以上この問題で悩みたくないデイダラは首を長くして例の赤髪の来店を待った。








「ふざけんな!うん!」
「何スか先輩!何で怒ってんスか!俺ちゃんと商品整理しましたよ!」

あれから小1時間待ったが例の赤髪は現れなかった。高校生であるデイダラは10時にはバイトが終わる。とうとう例の赤髪が現れることもなくその10時になってしまったので、深夜のシフトに入っている者達とすれ違いでスタッフルームで制服へと着替えていた。

「あーもうムカつく!トビムカつく!」
「先輩八つ当たりやめてくださいよー!」
「オイラがバカだった、うん。オイラがバカだったよ、うん」
「…先輩大丈夫っスか?」

バイト指定のジャケットをロッカーにしまうと、デイダラは置かれているパイプイスに腰を下ろした。そのまま倒れるかのように身体を倒し天井を見上げる。この胸に広がる虚無感は一体何なのだろうか。

「せんぱーい。俺先に失礼しますよー?」
「うーん。お疲れー」
「お疲れ様っスー」

視線はそのままでトビへと軽く手を振りまたデイダラは天井を見つめる。自分は何をこんなにも期待していたのだろうか。赤髪にもう一度会えること?赤髪に自分への想いをぶつけられること?赤髪を断ち切る自分を演じられること?きっとどれも正解だ。

「情けねえなあオイラ。からかわれただけなのに」

店にやってこないのが何よりの証拠だ。自分は騙されたんだ。本当に好きなら約束を破ったりはしないはず。飛段の言うことは間違いだった。まぁ彼を責めるつもりはないけれど。

いつまでもこうしてるわけにもいかないので、デイダラは立ち上がり、外していたネクタイを締めカーディガンを着てブレザーを羽織る。鞄を背負いスタッフルームを出、バイト仲間に軽い挨拶をして店を出た。

春といってもまだ夜は冷える。冷たい風が首もとをかすめたのでデイダラは無意識に肩をすくませた。店の裏に置いてある自転車を取りにいこうと足を進めた、そのときだった。

「おせェ」

背後から聞き覚えのある声が聞こえた。忘れるわけがない忘れられるわけがない。恐る恐る振り返ると、不機嫌な顔をした例の赤髪が立っていた。

「なっ何であんた…!」
「あ?昨日、明日も来るって言っただろーが」
「てっきりバイト中に来るのかと思って、」
「バイト中じゃ何も出来ねえだろ?」

だからわざわざ時間帯ずらして来てやったんだよ、なんて偉そうに呟いている。とりあえずデイダラは驚きを隠せない。

「ここじゃ話しにくいから移動するぜ」
「え!」
「早くしろ。俺は人を待つのが嫌いなんだよ」

なんて自己チューなんだと思ったが、端正な顔立ちの不機嫌な顔はどうも迫力があり反論出来ない。仕方なく急いで自転車を取りにいき、既に先を歩いている奴を自転車をひきながら追いかけた。








足取りが軽いのは何故?(何処かで喜んでる自分がいる)









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