――朝日が眩しい。
…ん?朝日ってこんなダイレクトに差し込むもんだっけか?ああ、カーテンでも閉め忘れたかな。
カーテンを探して手を伸ばしたはずなんだけど、そこにあったのは自身の腕とは似つかない「毛深い何か」
…何だこれ。
「ウォ!?」
…え。何この声。声っていうか鳴き声なんですけど!なんていうか動物みたいな…そんな感じの。
顔に触れてみる。…ん?何だかふわふわする…?恐る恐る尻に手を伸ばしたら――尻尾があった。この尻尾に毛むくじゃらの腕は、どこかで見たことがあるような…ないような…。
「クレアちゃーん!」
「どしたの?ゼロス」
「俺さまも構って欲しいなー!」
「うん!分かった!それじゃあノイシュ、次はゼロスと遊ぼっか!」
「ウォン!」
「え?」
俺さま、そういう意味で言ったつもりじゃ…
「あの、クレアちゃ…」
「…あっ!私、先生に買い出しを頼まれてたんだった!ごめんねゼロス、また今度いっぱいお話しようね!」うーん…。見れば見るほどあの時のしかかってきたロイドくんの犬に似ているような…。
まさかとは思うけど…身体が入れ替わっちまった…とか?
* * *「ふああ…。おはよう、ゼロス」
「くぅん!」
「ふぇ…?」
「わふっ!」
「あははっ!く、くすぐったいよゼロス〜!」
ちょっとちょっとー!朝っぱらからクレアちゃん押し倒すとか俺さまの身体で何やってんの!?
くっそ、すりすりじゃねーよすりすりじゃあ!ちくしょーうらやましい!そこ代われ!…ってそーじゃなくてだな。こんなところを誰かに見られでもしたら…。
…あっ。
「ゼロス…?」
「くぅん?」
「アンタ…こんな朝っぱらからなにやってんだい…!?」
「ぎゃんっ!?」
「変な声出すんじゃないよ!気色悪いねぇ…。クレア、大丈夫だったかい?」
「うん!だいじょぶだよ。あのね、しいな。今日はいつにも増してゼロスが甘えんぼさんなんだよ。ワンちゃんみたいなの!」
「…ワンちゃん?」
「うん!ほら、ゼロス。お手」
「わふっ!」
「ね?」
いやいやだって中身は本物の犬ですから。俺さまここにいますから。今、必死に二足歩行してますからー!どう見てもアイツ「くぅん」とか「わふっ」しか言ってねぇだろ気づいてクレアちゃん!
…しっかし変な感じだなぁ…。自分が動いてる姿を第三者の視点で見ることになるとは。三者っていうか…三犬?まあ、そこはどうでもいいか。
この様子じゃ誰も俺さまじゃないって気づいてくれなさそうだし…。どうすっかなー…。
「おはよう、ノイシュ。…何やってんだ?」
(ハニー!いいところに来てくれた!)
「ん?ああ、ゼロスか。…まーたクレアにちょっかい出してんのかよ。お前もゼロスも朝から元気だよなー」
(…え。ハニーってば意外とじじくさい…)
「ま、元気なのが一番なんだけどさ。あいつが元気ないとなんていうか…調子狂うし」
(ロイドくん…)
「朝から変な話してごめんな。飯、ここに置いとくから残さず食えよ。じゃあ後でな!」
僕、犬になりました
(分かっちゃいるけど…これ、どう見ても犬用のエサだよな…)
2012.03.10.
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