庭の手入れをしていたら呼び出しがかかった。主であるゼロスから緊急の用事だそう。
…うん、まあ十中八九どうでもいい用事だと思うけどね。
以前にもお茶の相手をしろだの本を読みきかせろ(それも大の男が、だ)だのというふざけた理由で呼び出されたことがある。

しかし、持っていた如雨露はフィントさんに奪い取られ「うまくやるのよ」とウインクされた。

…うまくやるって、なにをですか。


* * *



扉をノックすれば気の抜けた返事が返ってきた。
いつから私は世話係になったんだろう…。そんなことを思いながら部屋に入ると、満面の笑みを浮かべたゼロスがいた。

うわあ…嫌な予感しかしないんですけど。


「じゃーん!!」

「…なにこれ」

「俺さまからの誕生日プレゼント!」

「…えっ…」

「ロッティーちゃん、今日が誕生日なんだってな。…おめでとう」

「ゼロス…」


どうしよう、ちょっと感動。胸の辺りがじんとする。

どうせまたろくでもない用事だろうとか思ってごめんね。ふふ、やっぱり根はいいやつなんだな。幼なじみとして誇らしいや。

差し出されたそれを受け取って、丁寧に結ばれた赤いリボンを解いていく。可愛らしいくまが描かれた包装紙をはがせば、透明な袋に包まれた白と黒が見えてきた。…洋服?
襟と思わしき部分には小さなカードが挟まっていて「メイド イン セバスチャン」と書かれていた。

…ん?

違和感を一度閉じ込めて、袋から取り出したそれをふぁさりと広げた。


「ゼロスさま特注オーダーのロッティーちゃん専用スペシャルメイド服ミニスカートver.だ!」


どーん!という効果音でもつきそうなぐらい自慢気にふんぞり返るゼロス。

感動…していた私が馬鹿だった。


「ねぇ、まさかとは思うけど…」

「今日一日、これ着てお仕事頑張って〜!」

「却下」

「ガーン!俺さまショック!!」

「あ、いや、デザインは可愛いんだけどさ」

「だろ〜!俺さま自ら生地選びに出向いたんだぜ!…まあ、縫い合わせたのはセバスチャンなんだけどよ」


セバスチャンさま…。これを作ってるときどんな気持ちだったんだろう。楽しかったのかな。虚しかったのかな。いや、案外ノリノリで作っていたかもしれない。

しっかしほんとになんでもできる方なんだなー…。私も見習わなくちゃ。
でもこれはちょっとだけ、才能の無駄遣いととらえられなくも…ないような。

その(才能が遺憾なく発揮されている)プレゼントは、既製品なんじゃないかと見紛うぐらいの作りで、多分サイズもぴったりなんじゃないかな。
そして正直なところ、私好みのデザインである。

──スカート丈、以外は。


「ねぇ、なんでこんなに短いの?」

「ああ、それはだな…」


* * *


「ロッティーのスリーサイズ?」

「そ。俺さまの目測でも大丈夫だと思うんだけどよ。ほら、ロッティーちゃん着痩せするタイプだから確認しておいた方がいいと思って」

「ああ、そういうことなら構いませんよ。上から…」



えええええ!!なにそれちょっとどういうこと!?


「あ、それとロッティーはフリルとかレースとか好きだからそういうのもふんだんに使ってあげると喜ぶと思いますよ。そうだな…こんな感じで」

「わぁ…!オルガさま、お上手なんですね」

「ほんと、ロッティーに似合いそうなデザインだわ。ああでもどうせなら、このぐらいのスカート丈にしてみてはいかがかしら?」

「…面白そうだね」

「ロッティーちゃんスタイルいいからきっと似合うね!」



* * *


「…てな感じで」


おいちょっと待て。ひとのスリーサイズってそんな簡単に教えちゃうものなの?ねえ、なんでオルガもミモザちゃんも悪乗りしてるの?私スタイルとかよくないしシャルロちゃん突っ込むところそこじゃない!


「俺さまたちの汗と涙の努力の結晶なんだけど」

「実質、頑張ったのセバスチャンさまだけでしょ」

「細かいことは気にすんなって。で、受け取ってくれる?」

「まあ…一応…」


着る機会絶対ないけど気持ちは有り難いし…可愛いし…。部屋にでも飾っておこうかな。


「よーし!んじゃ、早速試着してもらうとして」

「はい?」

「万が一サイズ違ってたら直さなきゃいけないだろ?」

「いや、着るつもりもないし」

「もー、そんなこと言っちゃって」

「な、なんでそんな近…」

「着てくれないんなら脱がそうと思って」

「はあ!?…ちょ、待っ…」

「待たない」


そう言ってゼロスは壁に手をついた。…え?壁?
右を見る。ゼロスの腕。
左を見る。ゼロスの腕。
後ろには無機質な壁で、正面にはにっこりと、それはもう楽しそうに微笑むゼロス。

あ、悪魔だ…!こいつ天使の子供なんかじゃなくて悪魔の申し子だよ!絶対!!


20130709

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