「ロッティーちゃーん!たーすけてー!」
「………」
「あまりの暑さに俺さま溶けちまいそう!」
「…あの」
「ん?」
「でしたら、この手を離してみてはいかがでしょうか?」
「なんで?」
「なんでって…」
きょとん。と、子供のように首を傾げるゼロス。
あんたがくっついてくるから暑いんでしょーが!…なんて怒鳴る気にすらなれなくて。離れようとしないゼロスをくっつけたまま掃除を続けた。
まあ、私が本気で嫌がっていないからくっついてくるんだろうけどさ…。あ、嫌がってないっていうのは怒る気力もないからって意味ね?
嬉しいとかそんな気持ちは少〜しもないんだから、勘違いしないでよ?
「ロッティーちゃーん…あっちーよー…」
「…あ」
「あ?」
「とっておきの方法がありますわ、ゼロスさま」
くるりと身体を反転させ(半ば強引に)ゼロスを椅子に座らせた。
引き出しから取り出したブラシを右手にふわふわの真紅へ手を伸ばし、艶やかなそれを羨ましく(そして若干妬ましく)思いながら、髪を束ねた。かっちり結ぶのはあまり好きじゃないだろうから、少しだけ崩してふんわり仕上げる。
いわゆる「ポニーテール」というやつだ。
「はい、完成です」
「………」
「…お気に召しませんか?」
髪の毛が襟首に当たらないだけでも大分涼しくなると思うんだけどな…。まあ、気に入らなかったんなら仕方がない。
髪を結わえているゴムに手を伸ばし、しゅるりと解いた。と、思ったのだが。
私の右手は、ゼロスに掴まれていた。
すると、なにを考えているのかまったくわからない蒼色が突如へらりと笑ったのだ。
なにか嫌な予感がして手を引っ込めるよりも先にゼロスがにやりと笑い、それから、私の指先に口づけたのだった。
とける、とろける。
(!?…!?)
(ロッティーちゃんてば意外と器用…痛ててて!)
(ぎゃあああああ!!)
(!?痛い!痛いってばロッティーちゃん!!)
2012.06.17.