――朝。
世界はまだ深い眠りから覚めていない。
外にはぼんやりと朝霧がかかっていて、薄暗い。
「ふぁ…」
欠伸をして、クレアの瞼がゆっくりと開く。
すると目の前が紅で一杯だった。
ベッドのシーツは確か純白だった筈。
「…?」
漸く身体が眠りから覚め、何か温かいものに抱かれている感覚が分かる。
寝ぼけ眼で紅の行方を辿ると、クレアの胸に顔を埋めて眠っているゼロスの姿があった。
(…え?)
頭の中は一瞬にして真っ白になる。
(なっ…何でゼロスがここにいるのっ!?)
混乱しながらもゼロスを起こさないようにそっとベッドの中から逃れ、力無くその場に座り込む。
(し…しかも抱き締められてたし……あれ?)
必死に昨夜の記憶を思い出そうと頭を掻き毟る。
するとここが自分の部屋でないことに気が付く。
(…昨日、夜中にお手洗いに起きて……そこから部屋に戻って…あっ!)
「もしかしてその時に部屋を間違えた…とか?」
クレアの推測通り、たまたま隣りにあったゼロスの部屋に間違えて入ってしまったのだ。
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