「乱馬!私のこと、馬鹿にしてるか!?」
「いいじゃねぇか、少しぐらい。今はガキの姿なんだからよ」
ぐりぐり。
らんまが楽しそうに頭を撫でる。なでなで、ではなく、ぐりぐり。
…少し痛い。
乱馬と同じく、クレアも中国の呪泉郷で溺れた身。水を被ると子供に、お湯を被ると元の姿に戻るのだ。
今は、水を被った子供の姿。乱馬も変身して女の姿になってはいるが、高校生と幼稚園児。
力の差は歴然だ。
「…乱馬、せめて優しく撫でるね。痛いある」
「ん、分かった」
このままの姿で抵抗しても無駄だということを悟ったクレアは、らんまの腕の中で大人しくなる。
せめて、お湯があれば。
元の姿に戻りさえすれば、この手を振りほどくなど、いとも容易いのに。
…でも、少しだけなら。
少しだけなら、このままでもいいかもしれない。
「…寝ちまったか」
「………」
「さて、んじゃあクレアも寝ちまったことだし、俺も寝るとするかな」
クレアを膝に乗せたそのままの体勢で、らんまは深い眠りへと就いた。
追いかけ回されたり、決闘を申し込まれたり。変態兄妹に求愛されることもある、忙しい毎日。
たまには、ゆっくりするのも悪くない。
その時、クレアの髪飾りが、りん。と鳴った。
世界を忘れて唯一のお姫様になるの
(乱馬と、クレア?)
(あらあら、二人とも疲れて眠っちゃったのね)
2011.01.08.
thanks:
Mr.majorca