ゼロスの腕の中でじたばたともがくが、力では敵わない。


「…が……」

「話す気になっ…」

「…ゼロスが悪いんだからぁ!」


そう言ってクレアは、ゼロスが怯んだ一瞬の隙を突いて、逃げるように走り出した。
瞳には溢れんばかりの涙を溜めて。

その姿に一瞬戸惑うも、ゼロスは走り出した。
クレアは決して足が速い方ではないので、直ぐに追い付くことが出来た。


「…クレアちゃん!」


ゼロスに腕を掴まれ、クレアは立ち止まる。
夜の闇によく栄えるブロンドの髪が揺れる。


「…ごめん」

「……………ない?」

「ん?」

「もう…どこにもいかない?」


クレアはゆっくりとゼロスを振り向き、蒼い瞳で真っ直ぐゼロスを見る。

ゼロスはクレアを優しく抱き締め、耳元で囁いた。


「…ああ、もうどこにもいかないよ」




(…ホントに?)
(ああ)
(絶対だからね?)


2009.08.20. 


thanks:Mr.majorca

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