「っ…ゼロス…!」

「ちゃおー」


振り向くと、そこには大好きな紅色。
思わず笑みが零れてしまう。


(私ってば、何を嬉しがってるの…!)

「クレアちゃん」


ゼロスに名前を呼ばれるが、わざとらしく顔を逸らす。


「クレアちゃん?」


再度名前を呼ばれるが、クレアは振り向かない。


「…クレア」

「きゃっ!」


いつの間にかゼロスの顔が目の前にあった。
しかもいつものちゃん付けではなく、呼び捨てで呼ばれた。

心臓が飛び出るかと思うぐらいに驚いたが、無理矢理平静な態度を装い、目線も合わせずに冷たく言い放つ。


「…何?」

「何で怒ってんの」

「別に、怒ってなんかないけど!」


さっきまではへらへらしていたゼロスの表情が、急に真剣なものへと変わる。


「いいや、怒ってる」

「怒ってない!…言いたいことはそれだけ?……じゃあね!」


クレアが立ち上がったその時、後ろから抱き締められる。


「はっ…離して!」

「嫌だ。理由を言ってくれるまで絶対離さない」


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