彼は暇さえあればいつでもナンパに出掛ける。
今日だってアルタミラに着くや否や、忽然と姿を消して。
私達、一応付き合ってる筈なんだけどな…。
皆でホテルから用意された水着に着替え、レザレノが誇るアルタミラビーチで砂の城を作り合ったり、スイカ割りをしたり、チームに分かれてビーチバレーをしたり、と楽しい一時を過ごした。
一通り遊んだ後、仲間達はホテルに戻り、部屋で休憩をとっている。
ビーチから帰る際コレットに声を掛けられたが、
「もうちょっとしたら戻るから、大丈夫だよ」
と適当に断った。
コレットは気を悪くするどころか、
「あんまり無理しちゃ駄目だよ?」
私を気遣ってくれた。
クレアは、一向に姿を現さないゼロスのことばかり考えていた。
「ゼロスのばーか…」
一人ぽつんとビーチに佇み、水平線を眺めながら独りごちる。
(どうせ私のことなんか忘れて、綺麗な女の人達とお喋りしてるんだ…)
「うぅ…」
潮風がクレアの長い髪を撫でる。
――その時。
背後で砂を踏む音が聞こえた。
*prev - 1 - next#