クレアはベッドの上で毛布に包まり、持って来たクマのぬいぐるみをきつく抱き締める。
時折鳴り響く雷に、酷く怯えながら。
ゼロスは毛布の上からクレアの頭を撫で、あやしてやる。
「う…うぅっ……ぜ、ゼロス…」
「ん?」
「こ、怖いよぅ…」
クレアはくるりと振り返り、弱々しくゼロスの黒いベストを掴む。
(……嬉しいけど、俺さまだって男なんだぜ?)
――その時。
閃光が走り、より一層強い雷鳴が轟く。
すると部屋中の明かりという明かりが全て消え、二人は暗闇に呑まれる。
「い…いやぁああっ!」
クレアの中で何かが音を立てて切れ、抱えていたぬいぐるみを投げ付けて、見境なく暴れ出す。
「ちょ、クレアちゃん、大丈夫だか…」
「ら、ライトニング!」
「ぎゃあっ!」
恐怖のあまり、パニック状態に陥ったクレアは、訳も分からず魔術を発動してしまう。
いくら初級魔術とは雖も、密度の濃いマナの雷。
命中したゼロスは、ベッドから転がり落ちてしまう。
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