「見て見て、ゼロス!」


花壇を指差してクレアが言った。この時期になると色とりどりの薔薇で埋めつくされるここは、彼女の大のお気に入りだ。

ふふふ、と愛おしそうに花を眺める横顔を一瞥して、ゼロスは「可愛いねぇ」と呟いた。


「あ!このお花、ゼロスに似てるね」

「へ?」

「うん。きれいだなあって」


ゼロスは目を丸くした。


(クレアちゃん、男は『きれい』って言われてもあんまり嬉しくねーのよ…)


共に旅をしてわかったが、彼女は感じたこと、思ったことそのままを口にする。もちろん悪意はない。きっと、そういう風に育ったのだろう。
幼なじみだというロイドたちもまた似たような雰囲気をまとっていた。

その真っ直ぐさを眩しく思う反面、少しだけ疎ましくも思ってしまう。


「そしたら、クレアちゃんはこっちの白い薔薇だな」

「え?」


花弁が重なりあう赤い薔薇とは違い、白い薔薇の花弁は五枚。それも随分と小ぶりだ。
一房にたくさんのつぼみをつけるこの種類。今はまだ数えられる程度しか咲いていないが、すべてが開いたらさぞ見応えのあるものになるだろう。

さあ、どう返す。


「このお花が私なら、ゼロスと隣同士だね」


思いもよらない言葉に、ゼロスは再び目を丸くした。

さすがのクレアも今のは少し恥ずかしかったようで、視線を薔薇に戻したが、頬はしっかりと色付いている。その横顔を一瞥して、ゼロスは「可愛いねぇ」と呟いた。
今度はちゃんと耳に届いたらしく、頬の赤みが増してゆく。

赤い薔薇と白い薔薇、クレア曰く「隣同士」の花が仲むつまじく風になびいた。


20150522
thanks tiny

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