同じ学び舎に通う友達からの贈り物。それはクレアの似顔絵だったり、手紙だったり、手作りの栞だったりお揃いの筆記具だったりと様々だ。
それぞれかたちは違うけれど、込められた気持ちは一緒。

お誕生日おめでとう。
これからもよろしくね。
クレアのこと、だいすきだよ。

だいすきな人たちにもらったたくさんのプレゼントを枕元に置いて、ひとつひとつ、愛おしそうに眺めるクレア。
気持ちだけでも充分すぎるほど嬉しいのに、言葉まで、プレゼントまでもらって。私はどれだけしあわせ者なんだろう。


「…不思議だね」

「ん?」

「誰かにとっては何気ない1日なのに、私にとってはこんなにも特別な1日になるんだなあって」

「まあ、誕生日だからな」

「…そだね。でも…」


世界再生の旅に出てからほとんど連絡なんて取り合ってなかったのに、みんな私の誕生日を覚えててくれるんだよ。
村の入口まで迎えに来てくれて、プレゼントまで用意してくれて。最高の笑顔で迎えてくれて。


「どうして、こんなに…」


クレアの声が震える。

みんなはプレゼントを用意してくれているのに、私はみんなの誕生日に、なにひとつ用意できなかった。直接「おめでとう」って言うこともできなかった。手段がなかったといえばそれで終わりだけど、嬉しさの中に、ほんの少しだけ申し訳なさが混ざる。


「そりゃあ決まってんでしょーよ」


クレアの考えを打ち消すように、明るい声でゼロスが言った。


「み〜んな、クレアちゃんのことがすきだからだよ」

「え…?」

「私ばっかりもらって申し訳ない、とか思ってんだろ?んなもん次の機会に返せばいいんだって。見返りを求めてるわけじゃねーんだ。クレアちゃんに喜んでもらいたいっていう気持ちが、こうしてかたちになっただけ。だから…な?」


ぽろぽろと溢れる涙は、悲しさからじゃなく嬉しさから。
頭を撫でるゼロスの手は、とてもあたたかかった。

月明かりでぼんやりと浮かび上がるゼロスの表情がちょっとだけ照れくさそうなことに、クレアは気づいていない。


「…あり、が、とう」


ああ、もうすぐ今日が終わっちゃう。
もうちょっとだけ、余韻に浸ってもいいのかなあ。


20140624
thanks 誰花

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