雨はあまりすきじゃない。
お気に入りの洋服は濡れるし、髪の毛はぼさぼさに、靴はびちょびちょになっちゃうから。
ああ、昨日みたく、いいお天気だったらよかったのに。

でも、雨の日は。いつもより少しだけ、色んなものが鮮やかに見える気がする。

黄土色の地面は濃い茶色に、薄桃色の花は桃色に、若い緑は深い緑に。

偶然見つけたアジサイの花。昨日は「きれいだなあ…」と眺めていただけだったが、今日はなんだかいきいきしているように見える。葉の先から花弁の先から、しずくがこぼれてきらきらしていた。

アジサイは、土が酸性かアルカリ性かで花の色が変わるんだって。そういえば昔、リフィル先生に教えてもらったなあ…。

クレアは、無意識のうちに足を止めていた。


「わあ…!」


青、薄桃色、紫、白。なかには薄桃色から紫にかけてグラデーション状になっている花もあった。鮮やかだけれど主張しすぎないやわらかみのある色と、深緑とのバランスがとてもきれい。
大きなつぼみに小さなつぼみ。花や葉っぱにとってこの雨は、きっとすごく気持ちがいいものなんだろう。

クレアはにっこりと微笑んで、優しい手つきで葉を撫でた。


「今度来るときは、きっと咲いてるかな?」


クレアが腰をあげると、だんだんと雨粒が大きく、勢いが強くなってきた。

そろそろ帰らなくちゃ。そう思って帰路を見れば、見慣れた真紅が揺れていた。
これも雨のちからなのだろうか。見慣れたはずの紅色も、やっぱり、いつもより少しだけ鮮やかに見えた。

本当に、ほんの少しだけ。
だけど、その少しの違いがなんだかとっても嬉しくて、雨の日も悪くないかなあ…と思ったり。


「ゼロスー!」

「のわっ!?」


どこか寂しげな背中に、思いっきり抱きついたクレア。真紅がふわりと舞った。
勢いをつけすぎたのか二人してよろけてしまったけれど、今のクレアには、それすらも楽しく、嬉しく思えてしまうようだ。


「…って、クレアちゃん?」

「えへへ〜、びっくりした?」

「びっくりもなにも、ずぶ濡れじゃねーか…」

「うん!」

「…?」


今度は一緒に歩きたいなあ。


「…よくわかんねーけど、よかったな」

「…うんっ!」


晴れの日も、雨の日も。

あなたと一緒に。


20140608
thanks otogiunion

あとがきとお返事

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -