ヒュウ兄が頭を撫でればレパルダスは気持ちよさそうに目を細めた。五年前プラズマ団に奪われた妹ちゃんのチョロネコが進化した姿だ。
今ではすっかり……とまではいかないもののヒュウ兄や妹ちゃん、嬉しいことに、私にまで懐いてくれている。
ムーランドと違って自由奔放なポケモンだと思っていたから、その人懐こさに正直驚いていた。
「オマエ、ほんとに頭撫でてもらうのが好きなんだなー。昔っから変わんねぇな!」
楽しそうに笑いながらレパルダスの頭を撫でるヒュウ兄。
するとレパルダスはよほど気持ちがよかったのか、ヒュウ兄があぐらをかいている真ん中に身体を丸め、すやすやと眠りだした。
……むう。そこは私の特等席なのに。
これ以上楽しそうなふたり(正しくは一人と一匹だけど)を見ていられる自信がなくて、ヒュウ兄の部屋から逃げ出した。
「クレア」
「…なに?」
「こっち」
座れよ、と言って隣をたたくヒュウ兄。
ようやく再会出来たんだからこれぐらいは我慢しなくちゃ。そう言い聞かせてはみるものの、声をひそめているのはレパルダスを起こさないためなんだ。とか、ヒュウ兄の愛情を一身に受けられて羨ましいな。……とか。
そんなことがぐるぐるぐるぐる頭の中を巡ってしまう。
――ぽすん。
ヒュウ兄の手が、私の頭に乗せられた。
「オマエってほんと、わかりやすいな」
「…だって、ヒュウ兄が…」
「オマエがそういう反応するから、やめられなくなるんだっつーの」
優しい手つきで頭を撫でて、髪を梳いて、ぐぐっと顔を近づけて、ヒュウ兄は私の耳元で囁いた。
「…心配すんな。オレはオマエが一番だからよ」
それから、いつもみたいにいたずらっぽく笑った。
20130309
thanks
はこ