今日は、あなたがこの世に生を受けたことを感謝する日。
あのね、ゼロス――。


「んん〜…」

「おはよう、ゼロス」

「…あー…クレアちゃん?悪いけどもうちょっとだけ…」

「早く起きないと、朝ご飯ぜんぶロイドに食べられちゃうよ?」

「…でひゃひゃ!そーだな…」


クレアの肩から滑り落ちた栗色を梳きながらゼロスは柔らかく微笑み、くすぐったそうにするクレアを見て満足したのかはたまた安心したのか、再び深い眠りへと誘われたのだった。
窓からはあたたかな光が降り注ぎ、優しい風が吹き抜ける。

どうやら本当に眠ってしまったらしい。呼吸に合わせて胸が静かに上下している。
ここのところ野営が続いていたこと、自ら進んで見張り役を引き受けていたことが主な原因なのだろう。


「いつもありがとう」


にっこり笑ってそう言うとクレアは顔を近づけた。普段ヘアバンドでまとめているため、前髪を下しているゼロスはなんだかとても新鮮だ。
過酷な旅であるにも関わらず、出会った頃とまったく変わらないさらさらの真紅に指を通して「あのね」とクレアは呟く。

食堂では仲間たちが今日の主役であるゼロスを待ちかねている。豪華な料理も立派なプレゼントも用意できなかったけれど、大好きなあなたにたくさんの気持ちをこめて。




(お誕生日おめでとう!!)


2012.10.13. 


thanks:ことばあそび

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