きらきらと輝く星が、まんまるな月が、二人をぼんやりと照らしている。大きな切り株に腰掛けながら、いつになく低い位置にある月をクレアは少し不気味に思っていた。
早く朝にならないかな。そう思う反面、もうちょっとだけこの時間が続けばいいなと思う。その理由は、隣で星空を見上げているゼロスだった。先ほどから何度か呼びかけているのだが、どこか上の空といった様子だ。時間も時間だから仕方がない、言い聞かせてはみるものの…やはり寂しい。


「…ゼロス…」

「ん?」

「もう少し…そっちに行ってもいい?」


するとゼロスは目を丸くして、それから、いつもみたいにへらりと微笑んだ。クレアが隙間を詰めれば、二人の距離はぐっと縮まる。月明かりに照らされているゼロスの横顔は、いつもより一層美しくクレアの目に映っていた。
胸が、どきんと高鳴る。

そんなクレアの様子を知ってか知らずか、ゼロスはクレアの耳元に唇を寄せ、低く、甘く、囁いた。


「なんなら俺さまの腕の中でもいいけど?」


ぼんっ!という効果音でもつきそうな勢いでクレアの頬は真っ赤に染まっていく。夜目でもくっきりわかるほど赤いそれを隠そうと俯くクレアの頭上に、ゼロスの笑い声が降りそそいだ。


「でひゃひゃ!クレアちゃんてばかーわーいーいー!」

「う…」


いつだってゼロスの方が一枚上手で、それとなく冗談めかして流されてしまう。勿論ぜんぶ心の奥でしっかり受け止めてくれていることはわかっているけど。
でも、たまには私だって…!
そう意気込んだクレアはゼロスの蒼色を見据え、彼の手を握った。わずかに震えるゼロスの肩。笑い声が止んだと思ったら、クレアの目前に長い影が伸びていた。

真剣な蒼色。白い肌。
肩を滑り落ちる真紅。
ゼロスのぜんぶに、目を奪われていた。


「ゼロ、ス…?」


握り返された両手からゼロスの鼓動を感じる。ふと、背中に堅いなにかが触れた。それが切り株だと理解するのにさほど時間はかからなかった。
クレアは、不思議そうにゼロスを見上げていた。


「…クレアちゃん。あんまり可愛いことしてくれちゃうと、いつか痛い目見るかもよ?」

「…痛い目?」

「そ」


ゼロスの左手がクレアの頬を撫でた。突然のことに身体を強ばらせるクレアだったが、やはりどこか不思議そうな瞳でゼロスを見つめている。
逸らさず、屈さない瞳に、ゼロスは心の中で「面白いねえ」と呟いた。


「ちょいと!押すんじゃないよリーガル!」

「い、いや、今のは私ではなくジーニアスが…」

「姉さん!?どうして目隠しするのさ!」

「あなたには刺激が強すぎるわ」

「子供は…見てはいけません…」


「プレセアだって子供でしょ!」と嘆くジーニアスの隣では、顔を真っ赤にさせながら必死にコレットを宥めているロイド。と、なにやら詠唱を始めたらしいコレット。
いや、まだなにもしてませんからー!心の叫びも虚しく、ゼロスは天の裁きを受けたとか。




(そか、ゼロスの言ってた『痛い目』ってこういうことだったんだね!私、これから気をつけるね!)
(そりゃよかった…)
(…?)


2012.08.10. 


thanks:わんだーがーる

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