リフィルの家を後にしたクレアたちは、去り際にリフィルが言った言葉を考えていた。


「ねえゼロス、先生が言った『楽しみにしていなさい』って、どういう意味なのかな」
「そりゃ、誕生日プレゼントのことじゃねーの?」

「んー…、そう、なのかな。でも、違う気がするの…」
「まあ、村の入り口に行けば何かしらはわかるだろーよ」

「うん。じゃあ、行こっか」


村の入口とは言っても、イセリアには何ヶ所か存在する。どの入口に向かえば良いのかわからないはず、なのだが…。

ゼロスは平然とした様子で、ロイドの家がある方向の入り口へと向かっていく。


「ゼロス、その方向の入り口でいいの?」
「…リフィルさまに聞いたのよー。だから大丈夫!」

「そうだったんだ。じゃあ行こっか」
「…クレアちゃん…」
「何ー?」


何でもない、とため息をついたゼロスに、首を傾げるクレアだったが、何故ゼロスが自分に呆れているのかわかっていない彼女だった。

そんなこんなで村の入口近くに到着した二人は、見えた2つの人影に頬を緩ませる。


「ロイド!コレット!」
「クレア、ゼロス!」
「久し振りだねー!」


コレットがクレアに駆け寄り、手をとって喜びをあらわにする。

髪や目の色は違えど、顔立ちがそっくりな二人が向かい合って微笑んでいるさまは、まるで双子の女神を見ているかのようにどこか神々しく感じる。


「クレア、お誕生日おめでとう」
「そうだった。誕生日、おめでとう」
「ありがとう、コレット、ロイド」

「ここまで来たってことは、誕生日プレゼントを探しにきたってことか」


ロイドがそう言うと、クレアはこくりとうなずく。次のプレゼントへのヒントは、この二人が知っているということだ。

村の入口辺りに隠してあるのだろうか、とクレアが思案していると…。


「クレア、プレゼントはね、ある場所にあるの」
「そこまでの案内人は、すぐ近くにいる。俺たちじゃ、ないけどな」

「…え?ロイドたちじゃないの?」


ロイドたちじゃないとすれば…。クレアはゆっくりと横を……左隣にいるゼロスを振り返る。

彼は笑顔を浮かべていたが、それがいたずらっぽい種類のものであることに気づいた。


「ゼロスが…そうだったの?」
「そ。俺さまがプレゼントへの案内役。恋人にプレゼントを渡す役を他の人に譲るはずがないでしょーよ」

「言うなあゼロス」
「そだね。クレア、顔真っ赤だよ」

「自分で行動するときは、何とも思わないのにな…」


そう、少しあきれたように言うロイドだったが、鳶色の瞳は優しく輝いていた。
無意識でとる行動は、クレアにとって恥ずかしいという感覚ないようだ。


いまだに真っ赤になっているクレアを見ながら、ロイドとコレットは微笑みあったのだった。


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