――世界再生から数ヶ月。
一度イセリアに戻ってきていたクレアは、フランクからレイミアもまた戻ってきている、という話を聞き、嬉々として外へ出た。

階段を降りようとした瞬間、突進してきた物体にクレアは体勢を崩し、尻もちをついてしまう。


「いたたた…」
「クレア!久しぶり!」

「…え!?レイミア?」


すっとんきょうな声をあげたクレアは、遅れて抱きしめられていることに気付いた。肩口に顔を埋めていたレイミアだったが、満面の笑みで顔をあげた。

新緑の瞳がきらきらと輝き、クレアはくすくすと笑いながら口を開いた。


「久しぶりだね?旅以来ずっと会ってなかったから」
「そうだよ。やっとクレアに会えたー…。会えて嬉しいんだ」

「私も、レイミアに会えて嬉しいよ」
「ありがとう!」


レイミアがクレアから退き、ごめんね、と照れくさそうにしながら手を伸ばす。

それにつかまって体を起こしながら、クレアは首を振った。
完全にクレアが立ち上がったところで、レイミアは何かを思いついたように、にやりと笑う。

嫌な予感がしたクレアだが、彼女が何かを言う前にその笑顔のままあることを告げた。


「ねえ、ゼロスとはどうなってる?」
「……え?」
「ゼロスと恋人らしくなれた?」
「っ!?え、私はっ…!」

「ぷっ、クレア顔真っ赤!あはははっ!」
「〜〜っ!もう、レイミア!」


首筋まで真っ赤になったクレアをからかうように笑いつつ、レイミアは彼女がゼロスと上手くいっていることを悟った。


ふう、とため息をついて赤くなった顔を元に戻そうと、クレアはぱたぱたと顔をあおぐ。


「初々しいな、クレアは」
「…もう!レイミアは相変わらずなんだから!」
「そりゃお誉めにあずかり光悦ー」

「誉めてないよ…。でも、変わってなくて良かった」
「数ヶ月じゃ変わらないよ。…きっと、みんなも、ね」
「うん、そだね。みんな変わってないよね?…ねえ、中で話そう?私、たくさん話したいことがあるの!」


ふわりと笑うクレアに、レイミアは同じく微笑みを返す。

中へと促すクレアの後に続きながら、レイミアは先程とは全く種類の違う、笑みを浮かべた。




◇ ◆ ◇



話は尽きることなく、気づけば夕飯の時刻に近づいていた。レイミアは夕飯の誘いを丁重に断り、帰途に着いた。帰る途中、レイミアは立ち止まり懐から何かを取り出す。

薄暗がりの中では、それはよく見えないが――手紙、だろうか。
しばしそれを確認していた彼女は、踵を返した。

そして、薄闇の中をレイミアは駆けていった。


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