「クレアちゃーん!俺さまとポッキーゲームしようぜ!」

「ぽっきー…?」


初めて聞く言葉にクレアは首を傾げる。

それを見たゼロスはにこりと微笑み、手にしているお菓子の箱をクレアの目前に差し出した。

すると彼女は予想通り目を輝かせ、二つ返事で頷いた。


「ふあああ!お菓子〜!ゼロス、早く早くっ!」


ぴょんぴょんと飛び跳ねて箱の開封を急かすクレアを宥め、下心だらけの思惑がすんなり叶うことにゼロスは内心笑みを浮かべる。


「ほい」

「ん!」


袋を破り、餌を待ち侘びる雛鳥のように開けられたクレアの口に一本のポッキーを銜えさせる。

ぽきぽき、軽快な音がゼロスの耳に届いた。


(…楽しみは最後にとっておくもんよ)


そう、計画の確実性を増す為には、まだ仕上げに取り掛かる時ではない。

次々とポッキーを頬張るクレアの隣に座り、同じように食べ進めた。


「…あ、最後の一本?」


袋を覗き込んで問うクレアに、ゼロスは「そうみたいだな」と返した。


「私いっぱい食べちゃったから、ゼロスが食べて?」

「俺さまはいつでも食べることが出来るからよ。クレアちゃんが食べなって」

「でも…」


クレアの反応にゼロスの蒼色がきらりと光る。

間違いなく今が計画を実行する時だ。

じゃあ、と口を開いたゼロスはこう続ける。


「半分こしようぜ?」

「…いいの?」

「一緒に仲良く食べようや」

「…ありがとうっ!」


よほどこのポッキーが気に入っていたのか、クレアは子供のように無邪気な笑みを浮かべる。

先ほどと同じように銜えさせ、それを半分に折ろうと伸ばしたクレアの手首を優しく引いた。


「へほふ?」


至近距離で瞬く大きな瞳にゼロスはにへらと微笑んで、

――ぱくり。

そんな可愛らしい効果音の後に、クレアの頬が赤く染まったのだった。




(でひゃひゃ!クレアちゃん顔真っ赤〜!)
(…うっ、うるさい!)


2010.11.14. 


thanks:Mr.majorca

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