休日。二人だけの時間。ゆっくりしっとり過ぎてゆく。
大好きな人と共有出来るこの時間を嬉しく思いながら、私は椅子に腰掛けた。視線の先には、彼――リーガル・ブライアンの大きな背中。

「せっかくの休日なんだから」と意気込んで台所に立ったまではよかったものの、私の手から包丁を取り上げた彼。
始めは唇を尖らせてふて腐れていたけど、調理する彼の姿を見ていたらそんなことは綺麗さっぱり忘れてしまっていた。

トントン。ざくざく。
野菜を刻む、規則正しい音。どんな料理が出来るんだろう。彼のことだからきっと私好みの味付けにしてくれるんだろうな。私も彼のためになにかしてあげたいのに、いつも私はもらってばかり。

どうしたら、あなたと同じ目線で景色を見られるようになりますか?


(…すき、です)


心の中で呟いた。
ふと、規則正しい音が止んだ。
彼がゆっくり振り返る。そしてなんともいえない表情を浮かべ、無言のままこちらに向かってくるのだ。

え?もしかして今の聞こえてた…?
うわあああ恥ずかしい!穴があったら入りたい!いやむしろ埋めてくださいお願いしますうう…!

大きな手が私の髪を梳いて、それから優しく頬に触れた。
柔らかい濃青を直視出来なくて、恥ずかしさのあまり目を瞑った。

――ぎゅるるるる。


「………」

「………」


沈黙。
いや、あの…生理的なものだから仕方がないのは分かってるんだけどさ。もうちょっと時と場所を選んでほしいっていうか、その…ね?


「……ふっ」

「…!」

「すまない。待たせてしまったようだな。早く仕上げるとしよう」

(わっ、笑われた…!)

「クレア」

(どうしようもう恥ずかしいとかそんなレベルじゃないよ…!)

「…クレア」

「!」

「飾り付けを手伝ってくれ」

「…!はいっ!」


彼の大きな背中に、ぎゅっと抱き着いた。
私は、あなたと共に過ごせるこの時間を、なによりも愛しく思うのです。

ぐつぐつ。コトコト。
…ああ、いい匂い…。




(いただきます!)
(………)
(…食べないんですか?冷めちゃいますよ)
(…そうだな。私もいただくとしよう)


2012.06.17. 


thanks:わんだーがーる

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