しとしと。
じとじと。
むしむし。
雨の多いこの季節は、いつでも無気力症候群。
服は体にへばり付くし、丁寧に乾かしたはずの髪の毛はぼさぼさ広がる。
雨の日でも風の強い日でも、常にさらさらでいられる髪の毛になりたい。
そう、目の前で揺れる真紅のような。
「…不平等だ」
「んあ?」
ぽつりと呟けば、美しい真紅が波打ってこちらを振り返る。
さらさらでふわふわで。
ほら、綺麗。
「…うん、腹が立つ」
「何が…っていでででで!痛い!痛いから!」
「何か特別な手入れでもしてる訳?」
「だ、だから何が…」
「これ!」
そう言ってゼロスの真紅を一房差し出せば、彼はきょとんと首を傾げた。
ゼロスは私よりも幾つか年上だが、何故かそんな可愛らしいそぶりも似合ってしまう。
「羨ましい」よりも先に「腹が立つ」
「髪?」
「そ」
「いや、別に何もしてねぇけ…いだだだだだ!」
痛い痛いと喚いているが、それはゼロスの優しさ。
だってそんなに力込めてないもん。
私は、こんなくだらないやり取りに付き合ってくれる彼が好き。
ゼロスに「可愛い」と思われたくて色々試しているけれど、結局何一つ彼に敵わない。
「…あ」
「あ?」
「…あったわ。特別なケア」
「ホント!?」
こくりと頷くゼロスに「教えて!」と頼み込めば、彼は耳を差し出すよう合図を送る。
そして私の耳に吹き込まれたのは、ゼロスの言う「特別なケア」の方法。
それを聞いた私の顔は、真っ赤に染まった。
「…っ、馬鹿!」
「でひゃひゃ!だって真実なんだもんよ〜」
「…む、むかつく!」
「へ?」
そうしてまたゼロスの髪の毛を引っ張れば、彼は私のわがままに付き合ってくれる。
だけどさっきと違うのは、ゼロスの髪色のように染まった私の頬。
…やっぱり、ゼロスには敵わないや。
好き、嫌い、嫌い、好きでしょ?
(そりゃあもうハニーの愛が目一杯詰まってるからな!)
2011.05.12.
thanks:
Mr.majorca