誰もが使っている何気ない言葉。
だけどボクは、その言葉がずっと欲しかった。

それはたった一言なのに、あたたかくてしあわせな気分になれるから。


「おかえりなさい」


クレアはにこりと微笑んで、銀髪の青年――ジーニアス・セイジを迎えた。
二人はかつて世界再生の旅を共にした仲間であり、幼なじみでもある。

しかし、まさか時間を共有する仲になろうとは。
仲間達はおろか、本人達すら予想していなかったであろう。


「ただいま、クレア」


少年のあどけなさを残しつつ、立派な青年へと成長したジーニアス。
旅をしていた頃よりも身長が伸び、いつしかクレアの背丈を越えていた。

また、伸びたのは身長だけではない。


「ちょうどご飯が出来たところなの。冷めないうちに食べ…きゃっ!」


クレアの肩に顔を埋めると、柔らかな銀髪が頬をくすぐる。
後ろから回された両手に力がこもると、クレアは照れ臭そうに微笑んだ。

時間を共有して分かったことだが、これは彼なりの甘え方なのだ。


「もう一回言って?」

「え?」

「『おかえり』って」


小さな頃から村を転々とし、一つの場所に居住することがなかった。
自分自身を偽って、怯えながら暮らす毎日。

苦しくて仕方がなかった。何度も何度も逃げ出した。人間やエルフと分かりあえるはずがないと、そう思っていた。

だけど、旅に出て分かったんだ。
みんながみんな、そうじゃないって。

ボクにもいたんだ。
分かりあえる仲間と、心から守りたいと願う大切な人が。


「おかえりなさい。ジーニアス」




(それは、何よりも望んでいた言葉)


2011.08.13. 


thanks:Mr.majorca

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