「あの、どうかしたんですか?」
「あぁ、ここで3、4歳くらいの女の子を見なかったかい?」
「ナヤ、ですか?名前は」
「! そうだ!知っているのかい?」
「はい。泣いているのを見つけて、今保護しています」
「そうだったのか。ありがとう」
「ナヤを預かっていてくれたのね?本当にありがとうございました」
「まだ小さいから目を離したすきにどっかに行ってたんだよな」
父親らしき人が礼を言うと、続いて母親、兄らしい人が笑って礼を言った。
コレットはそれに笑みを返して母親を見る。
母親の波打つ綺麗な栗色の髪は、確かにクレアに似ていた。
父親が青の瞳なので、ナヤは見事に二人の特徴を受け継いでいるのだろう。
「ねぇ、リズナ。ナヤはお父さんとお母さんの髪と目をもらったんだね」
「そうみたい。兄の方はお父さんそのままってところだけど」
「あの、済まないがナヤの所まで案内してくれないか?」
「すいません!ついて来てください」
父親に怪訝そうに問い掛けられ、コレットとリズナは、慌ててゼロスたちの元に向かった。
「クレアお姉ちゃんっ、ここ!」
「わかった!…よし、完成!」
「やったー!!」
「完成か?」
「うんっ!お兄ちゃん、動かないでね?」
「わかった」
ゼロスを埋めて、その上に土をかけていくという作業をしながら、ナヤは常に笑顔を浮かべていた。
すっかり打ち解け、懐いて後をついて回っているナヤを見ながら、リフィルは珍しくぼーっとしていた。
「こっちですよ」
「ありがとうございます。…あ、ナヤッ!」
「――!ママッ!」
「ナヤ、良かった…。もう、だめでしょ、勝手にどこかに行ったりしたら」
「ごめんなさい」
「今までナヤを預かっていてくださって、本当にありがとうございました。ナヤ、ありがとうは?」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう!」
「もう心配かけるなよ、ほら」
「わかった!」
「では失礼します」
兄と手を繋いで、いつまでも手を降り続けているナヤに、クレアたちもふりかえしつづけた。
姿が見えなくなると、クレアはほうっと息を吐く。疲れたわけではないが、なにかが終わったような、そんな気がした。
「…行っちゃったね」
「そだね。でも、見つかって良かった」
「うん!ねぇ、遊びに行こうよ!」
「行く!今度は泳ぎの競争だよ!」
パタパタと元気に走っていく三人組を、見るものが一人。
「ちょ、俺さま動けないんですけど…」
夕方までこの体勢だったことは、言うまでもないだろう。
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