「リフィル先生」
「あら、どうしたの――って、この子はどうしたの?」
「さすがリフィルさま、冷静だな」


驚いた様子もなく怪訝そうな顔をしてナヤを見た。
ぴくりと肩を揺らして、後ろに下がったナヤに、クレアは優しく手を握ってやる。

リフィルはナヤの様子に気づいたのか、ごめんなさい、と普段は浮かべないような優しい笑顔を浮かべた。


「名前を教えてくれるかしら?」
「…ナヤです」
「ナヤ、ね。クレア、迷子?」
「はい。泣いていたのを見つけて、連れて来たんです」
「コレットちゃんとリズナは今親を探しに行ってる。俺さまとクレアちゃんはナヤのお守りってわけ」
「そうなの。そうなら来なさい。今は日差しが強いから、パラソルの中に入った方がいいわ」

「どうしたの、ナヤ?」
「クレアお姉ちゃん、砂遊びしたい!ダメ?」
「そんなことないよ!じゃあ一緒に遊ぼっか」
「うん!ゼロスお兄ちゃんも!」
「俺さまもか?…別にいいけどよ」
「うんっ!」


満面の笑顔でクレアたちの手を引っ張るナヤを、リフィルは微笑ましく見守っていた。
彼女の脳裏には歳の離れた弟が思い浮かんでいた。

今はロイドたちと遊んでいるであろう、ジーニアスをナヤに重ね、リフィルはゆっくりと目を閉じた。


「お姉ちゃん、トンネル!」
「そだね!穴がもう少しで…、できた!」
「わーい!」
「すげぇな。でかっ!」
「えへへへ…」
「次はゼロスお兄ちゃんを埋めて遊ぼっ!」
「えっ?ゼロス?」
「うん!ダメ?」
「…別にいいけどよ」


ナヤが元気に走り回るのに、クレアとゼロスはついていくことで精一杯だった。


そんな風にクレアたちが過ごしている間、リズナとコレットは手分けして聞き込みをしていた。
家族連れで、男性か女性が栗色の髪の人。

意外に数が多く、捜査は難航していた。
一旦合流した二人は、首を振る。


「なかなか見つからないね…」
「結構多いんだよね…。一回、ナヤを見つけた場所に戻ってみようか」
「そだね。なんかわかるかな?」


一縷の望みをかけて戻ってみると、何やらキョロキョロと辺りを見回す三人の親子連れがいた。


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