季節は夏。強い日差しが照り付け、人はそれを避けて家の中に篭っていた。
今日は特に暑く、まだ午前中だというのに景色がかすかに揺らめいて見えるくらいだった。

いつもはイセリアの門を守っている門番でさえも、今日ばかりは自分の家に引き取っていた。

だからだろうか。門から外へと出ていく人影が四人ほどいたのにも関わらず、気付く者は誰もいなかった。












「やっぱりダメだよー。戻ろうよ」


この暑さに生気を吸い取られたのか、ぐったりと歩きながら小柄な銀髪少年が言う。

その言葉に少し前を歩いていた明るい茶髪を伸ばした少女が振り返った。
ほんの少し険しい表情だが、それが少年の発言によるものなのか、暑さによるものなのかは、定かではない。


「ジーニアスだけ戻ればいいよ。あたしは行く」
「リズナ、そんな言い方しちゃダメだよ。ジーニアス、戻りたかったら戻っていいんだよ?」
「そうだぞ。もともと俺とリズナが計画したんだからな。見つかったとき責任問われちまうし」

「…いいよ。ボクも行く。だってコレットが初めて海に行くんだから、ボクだってついて行きたい」
「ありがとう、ジーニアス」


夏の暑さに似合わない春のような微笑みを浮かべたコレットは、目線をジーニアスからリズナ――前へと向けた。

鮮やかな青色の瞳が写す景色には、遠くに見える海が写っていることだろう。


ジーニアスが渋りながらも来ている理由、リズナがぴりぴりしている理由。
それは、コレットを内緒でイセリアの外へと連れだし、海へと連れていくことを計画したからだった。

海で遊べないコレットのために、ロイドとリズナで相談し、こっそり連れていく計画を立てた。
ジーニアスを共犯者にして、四人はイセリアの北にある海へと向かっていた。


「コレット、そろそろ海だよ」
「本当?楽しみだなー」
「大体、何で神子はイセリアから出ちゃダメなんだろうな?」
「…まぁ、確かに気になるけどさ、それより海を楽しもうよ。見えてきたよっ!」

「うわーっ!あれが海なんだねっ!」
「青にキラキラ輝いてきれいだな!」
「どうして海は青いの?」
「…ジーニアスー」
「全く…。ボクも詳しいことは知らないんだけどね、青色だけを海は反射しないで取り込む…、そんな感じだから、青く見えるんだって。よくわかんないけどね」

「すごいよジーニアス!やっぱりジーニアスはすごいよっ!」
「そ、そう?ありがとう」
「なあなあ、早く入ろうぜ!泳ぎてえっ!」
「あたしも!コレット、着替えに行こう」
「うん。また後でね」
「ああ。俺らは先に入ってるぞ」
「わかったー」


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