「ロイド待ってよー!」


私は肩で息をしながら、必死にロイドを追い掛ける。目の前にロイドのお家が見えて来た。


「もう少しだから頑…」


ロイドは時偶こちらを振り返って、私の様子を伺ってくれる。それがちょっぴり嬉しくて。


ほら、また振り返って――あれ?


「足元を……見ろ?」


ロイドに言われた通り、足元を見ると大きな石。だけど急に止まることは出来なくて、その石に躓いてしまう。


「……きゃっ!?」

「コレット!」


ロイドが伸ばしてくれた手を必死に掴んだ。でも、よっぽど強く掴んじゃったのかな。二人揃ってお家の前に流れている小川に転倒してしまった。


綺麗な水しぶきが、青空によく映える。


「ごめんね、ロイド…」


私は尻餅をついたままロイドに謝罪すると、ロイドは俯いたままで肩を震わせる。


お、怒らせちゃったかな?当たり前だよね。私のせいで、ロイドまでずぶ濡れなんだもの。


「ロイド…」


もう一度ロイドに声を掛けると、朗らかな声が微かに聞こえて来る。


「…ふぇっ?」


思わず間抜けな声を出してしまうと、ロイドは漸く顔を上げてくれた。


――あれ?…笑ってる。


「やっぱり、コレットはコレットだな!」


そう言ってロイドは私の頭を撫でた。


「ろ、ロイド…?」

「お前、明日誕生日だってのに、何だか元気なかったからさ」


そう言ってロイドはにこりと微笑む。


ああ、なんて眩しい笑顔なんだろう。


(…私、やっぱり……)


私は明日、16歳を迎えたら世界再生の旅に出る。そうしたら、もう二度と皆に――ロイドに会えなくなる。


でも不思議。あなたのことを考えると天使になることなんて、自分の存在が消えてしまうことなんて、ちっとも怖くない。


「…コレット?」

「な、何でもないよ!明日、楽しみにしてるね」

「おう!任せとけ!」




(例えこの身が消えたとしても、私の‘心’はあなたと共に)


thanks:Mr.majorca

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