空を見上げると、しとしとと雨が降って来た。
そこに私は立ち尽くす。
頬から伝う涙が、雨に紛れてしまうように――。


「大丈夫、いつものように越えられる………」


雨の音で掻き消えてしまうぐらい小さな声で、自身に強く言い聞かせる。


「大切な人を失うのは…悲しいです」


段々と雨が激しくなる。
頬に、身体に当たる雨粒が少し痛い。


「でも……越えられない悲しみではありません」


私は、ゆっくりと俯く。
頬を伝うのは涙か滴か。


「魅花様…」


先刻、天へ召された主人の名を呼ぶ。
決して届くことはないけれど、何度も何度も、呪文のように繰り返す。


「さよう…なら……」




私は守護月天。天に浮かぶ月のように主から離れることなく守り続ける。


人間の命とは儚いもの。


月の精霊である私は、これからも沢山のご主人様と出会い、別れ、長い年月を生き続ける。




(さようなら…魅花様)


thanks:Mr.majorca

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