私より一回りも二回りもちいさな手。赤ちゃんは、その可愛らしい手で必死にお母さんにしがみつく。
ううん。もしかしたら、しがみついているんじゃなくて、お母さんの体温を感じているのかな。
もちろんお母さんは、万が一にも赤ちゃんがずり落ちないようしっかり支えている。ひとつひとつ動きを見て、角度を変えてみたり。
一方の赤ちゃんは、まだ言葉を発することはできないけれど、表情や音で、全力で想いを伝えている。
街中で出会った、微笑ましい親子のお話。
「ほい」
「え?」
「おいで」
ぽんぽん。と、ソファの隣を叩くゼロス。
「おいで、クレアちゃん」
広げられた両腕の中へ飛び込めば、ふんわりと、やさしい香りがした。