『ロイド、だいじょぶだよ。私、気が付いてた。何度かレミエルさまに会う内に、この人は違うって思っていたから…。でも、どうしてだろう。何だか目の奥が痛いよ…』

「コレット!気付いてたなら何で!」


コレットの声が心に直接響く。クレア以外の仲間達にも、コレットの声は届いているようだった。それはコレットにとっても意外な出来事だったようで、彼女は満面の笑みを浮かべ、ロイドの両手を優しく掬い取った。


『…私の声聞こえるの?嬉しい。最後にロイドにさよなら、言えるね』

「コレット…ごめん!助けてあげられなくて、ごめん!もう間違えないって誓ったのに、俺、また間違えてたみたいだ…」

『ううん。ありがとう、ロイド。私、ロイドがいたからこの世界を護りたいって思えるようになったんだよ。ロイドがいたから…私、十六年の命をちゃんと生きようって思えたの…だから…』


コレットの身体がふわりと宙に浮いた。ロイドは必死に手を伸ばすけれどそれが届くことはなかった。

イセリアでの懐かしい想い出が頭の中を支配する。コレットを探して村を飛び出したあの日、冷たい雨が身体に染みて。目が覚めるとベッドの上にいて、まだ名前も顔も知らないはずなのにロイドとジーニアスがお見舞いに来てくれた。
世界再生の為、天使化するコレットに何もしてあげられない自分の無力さが悔しくて、みんなに隠れて泣いていたこともあった。一番辛いのは、コレットなのに。私は…何をしているの?旅に出る前からこうなることを知っていて。止めることも見送ることも出来ず、ただ涙を流すことしか出来ないなんて馬鹿げてる。

コレットがいなくなるなんて、そんなの嫌。でも私はコレットの天使化を止めないことに決めた。それが、コレットとの最後の約束だったから――。









でも、でもね、本当は…









『もう、時間…みたい…。さよなら…』


コレットの声に顔を上げるとこちらを向いて微笑んでいた。ありがとう、そうコレットの唇が動いた気がする。声は、届かなかったけれど。

コレットの背から薄桃色の羽が生え、レミエルの隣へと並ぶ。瞳を閉じて安らかに佇むコレットは、まるで眠っているようだった。しかし次に彼女が瞳を開けると、血のように赤い瞳があった。
意識の光が消えた、無機質な瞳。


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