(…雪が降ってる…)


白銀の景色の中、クレアは一人佇んでいた。


(男の子、いるかな?)


過去に見た夢の中の少年を探して真っ白な世界を歩く。ざくざくと雪を踏む音、ひんやりとした感触が何だか心地よい。


「あっ、いた!」


視線の先には紅毛の少年が防寒具を纏って蹲っていた。雪の白とは対照的な紅がよく映える。


「…君、どうしたの?」


声を掛けると少年は首を擡げてクレアを見る。綺麗な蒼い瞳に長い睫毛、美少年としか形容の仕様がないぐらい端正な顔立ちをしていた。


「…誰?」

「私はクレア。神子と一緒に世界再生の旅をしているの」

「みこと、一緒…?」


少年が首を傾げるとクレアはにこりと微笑んで、その隣に腰を下ろした。


「うん。コレットっていう女の子。神子は凄く、世界を愛しているのよ」

「世界を、愛する…?」

「世界の為なら、自分のことは顧みない芯の強い子なの。でも、私は…」


気付くと瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちていた。無意識の内に言葉も訥々となり、遂には両手で顔を覆ってしまっていた。


「…コレットが、いなくなる、なんて…嫌だよ。でも、私には……どうすれば、良いのか分から、ない…!」

「…お姉ちゃんは、優しいんだね…」


少年はクレアを抱き締め、まるで子供をあやすかのようにして優しく頭を撫でた。自身より小さい男の子に頭を撫でられるなんて酷く滑稽なはずなのに、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。


「…お母様も、僕のことをそんな風に想ってくれたら良かったのにな…」


少年は自嘲するように独りごちて空を見上げる。すると先程までの穏やかだった笑みが消え、頭を抱えて蹲ってしまった。少年の肩が、否、全身が震えている。


「…赤い、雪……?」


少年の反応を不思議に思ったクレアが空を見上げると、空から降って来たのは血のように赤い雪。









「ゆ、め……?」


クレアは頬を伝う涙を拭ってベッドから降りた。窓を開けて冷たい空気に目を覚ますと、小屋の前でノイシュと向かい合っているクラトスを見つけた。何かを話しているようだったが、ここからでは聞こえない。椅子に掛けてあった上着を纏い、一人と一匹の元へと向かった。


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