ハイマへ到着し、ピエトロの呪いを解いた一行。彼の証言によるとアスカード人間牧場で『魔導砲』という兵器を開発していたらしい。クヴァルを倒して収容されていた人々を助け出したことを話して聞かせると、彼は目を輝かせた。
「魔導砲のことが気になるわね」
「そうだな。しかし詮索したところで仕方あるまい」
クラトスの答えにリフィルは「そうね」と短く返した。シルヴァラントを彷徨うクララを探す術がないことに落ち込む一行だったが、まずは救いの塔へ向かうことが先決だった。
「今晩は自由行動にしましょう。ただし、村の外には出ないこと。よろしい?」
飛竜の手配を済ませたリフィルが仲間達を見回すと、コレットがクレアを見つめる。
「…ありがとう…?」
コレットの意志を代弁すると、リフィルは憂いの表情を浮かべた。
「いいのよ、そんなの。あなたの今後を知っていて、私にはこんなことしか出来ないのだから…」
コレットはぶんぶんと首を横に振り、微笑んだ。心なしか、いつもより弱々しい笑みだった気がした。
「ねぇ、コレット…」
(なぁに?)
コレットとクレアの二人は、ハイマの頂上で互いに身を寄せ合うようにして座っていた。
「本当に…天使になっても…後悔しない?」
(………)
コレットは少しばかり目を細め、晴れ渡る青空を見上げた。
(…本当は、少し怖い。でも、自分の人間としての命を引き替えにシルヴァラントが生まれ変わるなら、自分の命が世界中に溢れるってこと。そう考えたら…だいじょぶ)
「…コレットは、強いね」
クレアの言葉にコレットはにこりと微笑んだ。やはり先程の弱々しい笑みは見間違いだったのだろうか、いつものコレットの笑顔だ。そんなことを考えていると、何かの気配を感じ取ったのか、コレットが後ろを向いた。
「ロイド!」
そこにはいつもの天真爛漫な姿ではなく、暗い面持ちのロイドがいた。ゆっくりとこちらに歩みを進めて来る。
「コレット…少し話をしようぜ。書いてくれればいいからさ」
「じゃあ、私はこれで」
クレアが立ち上がったその時、コレットが服の裾を掴む。
「…コレット?」
(明日起こること、ロイドには内緒だよ…)
コレットが微笑むと、クレアはコレットの手を優しく包み、呟いた。
「…分かった。コレットがそう望むなら…」
そう言い残してクレアは頂上から街へと続く坂を下る。その途中様々な、複雑な思いが交錯した。
「…私は、どうすれば良いのかなぁ?……っ」
嗚咽と共にその場に蹲り、咽び泣いてしまった。
明日、コレットは――。
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