ユニコーンホーンの力により、新たな治癒術を使いこなすことが可能となったリフィル。
コレットの願いを叶える為、一行はハイマで待つピエトロの元へと向かう。その道中、コレットとクレアは久しぶりに言葉を交わした。といってもコレットの声はクレアの心の中にしか届かないようで、周りから見ればクレアが独白しているようにしか見えないが、二人の会話はとても弾んでいた――。
「ねぇ、しいな」
コレットと手を繋いだままクレアがしいなを呼ぶと、彼女はなんだい?と首を傾げて二人を振り返った。
「あのね、コレットがいつか天使さまに会えるといいね、って!ね、コレット」
クレアが向くとコレットはにこやかに頷いた。
「天使さま…?」
「あっ、しいなにはまだ話してなかったかな?私ね、夢で天使さまを見るんだ」
「へぇ…。その天使さまってのは、どんな姿をしてるんだい?」
訊くと、クレアは顔を輝かせた。この話題を出すと、いつもロイドやジーニアスに軽くあしらわれてしまうので、しいなが反応してくれたことが余程嬉しかったのだろう。
「んとね…顔は分からないけど、真紅の髪だよ。長くてふわふわなの!」
クレアの言葉を耳にした瞬間しいなの表情が僅かに引き攣った。それに気付いたクレアが声を掛けると、しいなは適当な相槌を打って受け流した。
「ああ…いや、こっちの話サ」
「それでね、きっと性格も良いんだよ!」
しいなは顎に手を当て、ある人物のことを思い出しながらクレアの言葉を咀嚼する。
「なぁ、クレア」
「うん?」
「もしも天使さまって奴が物凄い女好きで、豪遊してるような人物だったら…どうするんだい?」
満面の笑みでしいなを振り返ったクレアからその表情は消え、その場に俯いてしまった。しかしそれは一瞬のことで、ゆっくりと顔を上げたクレアは言った。
「そんな訳ないよぉ〜。でも…もしも…万が一そんなことになったら…」
「…なったら?」
「…あ!もうすぐハイマに到着するみたいだよ。コレット、行こっ!」
そう言ってコレットの手を引き、クレアは走り去ってしまった。一人残されたしいなはぼそりと呟いた。
「まさか…あのアホ神子な訳が…ない…よね?」
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