再びユウマシ湖へと足を運んだクレア達一行。ウンディーネの力を借り、ユニコーンに接触しようと試みる。
「よし、頼むぞしいな!ウンディーネに俺達を運んでもらってくれ」
声高々に言ったロイドの言葉をクラトスが否定する。何故かと問うたジーニアスには、リフィルが答えた。
「ユニコーンは…清らかな乙女しか近付くことが出来ないのよ」
「じゃあ、姉さん達だけで…」
「私は…いいわ。それにしても困ったわね。コレットがこの状態だし、クレアは先程の傷の心配があるわ…」
リフィルの言葉にしいなが憤慨する。
「あ、あたしは資格無しだっていうのかい!?」
『資格?』
ロイドとジーニアス、クレアの声が綺麗に重なった。
「声を揃えるんじゃないよ!」
憤慨するしいなを余所に、クラトスが溜息混じりに言う。
「…では、神子としいな、クレアの三人で行けば良かろう」
「何で先生は駄目なんだよ」
「大人、だからよ」
「ふーん?」
リフィルの答えを今一理解出来ていないロイドが小首を傾げると、耳まで真っ赤に染め上げたしいなが間に割り込み、ウンディーネを召喚した。
すると、ユニコーンが湖底から姿を現す。先程まで覆い被さっていた木片は、どういう訳か跡形もなく消え去っていた。
白いしなやかな身体に、若草色の鬣。額に白と水色の縞模様の角を生やしており、漆のように黒い瞳を三人に向けた。
(マーテル…か?)
どこからか、頭の中に直前響く声があった。ユニコーンはコレットとクレアを見比べている。
「マーテル?女神マーテルかい?」
「……」
しいなが聞き返す隣で、コレットが無言のままユニコーンを見つめた。
(違う?お前はコレットで、隣の者がしいな、クレアというのか?)
「…コレットの声が、分かるの?」
クレアが問うと、ユニコーンは頷いた。若草色の鬣が風に靡く。
(私が生かされてきたのは、目覚めたマーテルの病を救う為…。お前と同じ病を救う為)
「…だったらコレットを助けてくれ!ユニコーンの角には、そういう力があるんだろ?」
しいなが懇願すると、コレットはしいなの帯を引っ張り、首を振った。そしてユニコーンを見る。
(お前は約束を交わした人間を助ける為に、ここにいるというのだな?…そうか、お前は再生の神子だったのか)
コレットが頷くと、ユニコーンの角が淡い光に変わり、クレアを包み込んだ。ゆっくり瞼を開けると、掌にユニコーンホーンが収まっていた。不意に、ユニコーンの身体が少しずつ薄れ始めた。
「どうしたんだい!?」
(我々にとって角は命そのもの。…案ずるな。私から新たな命が誕生し、その新しい命が終わると、またそこから新しい命が生まれる。我々は…永遠に生き続ける…)
一際強く光が瞬き、クレア達は目を覆った。次に瞼を開けた時には、ユニコーンの姿はなかった。
(…ありがとう、ユニコーン)
溢れそうになる涙を堪え、岸辺で待つ仲間達の元へ戻った。
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