「…それは、シルヴァラントを見殺しにするってことか」
今まで口を閉ざしていたロイドが、絞り出すような声で言った。
「そう言うけど、あんた達が再生を行うことによって、確かに存在しているテセアラは滅亡するんだ。…やってることは、同じだよ」
「……」
事態を静観していたコレットが、真っ直ぐにしいなを見つめた。
「…そんな目で見ないどくれ、コレット。あんたがそんなつもりじゃないことは分かってるよ。あたしだって、どうして良いのか分からないんだ」
酷く困惑した表情で、しいなは訥々と語る。
「テセアラを守る為に来たけど、この世界は貧しくて、皆苦しんでて…。でも、あたしが世界再生を許してしまったら、テセアラがここと同じようになってしまう……」
仲間達の顔を見回して、懇願するように言った。
「…なあ、他に道はないのか?シルヴァラントもテセアラも、コレットも幸せになれる道はサ!」
「そんな都合のいいものは、現実にはないのではなくて?」
「…我々に出来る最善のことは、今、危機に瀕しているシルヴァラントを救うことだ」
その時、コレットがクレアの手を掬い取る。
「…コレット?」
コレットはクレアの掌に自身の指で文字を綴る。クレアがその意図に気付き、コレットの意思を代弁する。
「…レミエル様に……お願い…してみる。二つの…世界を……救う方法がないか…」
「…もしも上手くいかなかったら、あたしはやっぱりアンタを殺すかもしれない」
コレットはしいなを見つめると、再びクレアの掌に指を滑らせた。
「その時は……私も…戦うかもしれない…。私も……シルヴァラントが…好きだから……」
しいなは肩を竦め、沈痛な面持ちで頷いた。
「…分かったよ。どうあっても、アンタは天使になるんだね」
コレットはしいなを向き、にこりと微笑んだ。
to be continued...
(09.11.02.)
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