アスカードからマナの守護塔へ向かう道中、武器を構えた冒険者達に囲まれ、夥しい数の傷を負ったクララを発見した。
クララはクレア達一行を発見するや否や、その引き摺るほどに長い腕で冒険者達を薙ぎ払い、逃げ去ってしまった。
すると、小さな光る物体がクララの洋服のポケットから零れ落ちるのを目にする。気付いたクレアが拾い上げてリフィルに尋ねると、マナの守護塔の鍵のようだった。
(…もしかして、私達に鍵を渡す為…?)
「再生の神子よ。よくぞここまで辿り着いた。祭壇に祈りを捧げよ」
レミエルの声が天から降り注ぐと、コレットは祭壇へと歩みを進め、祈りを捧げる。
「大地を護り育む大いなる女神マーテルよ。御身の力をここに!」
祭壇の光が凝縮され、眩い光を放つ。今までとは桁違いの輝きにクレアは咄嗟に目を瞑った。光が収まったところで瞼を開けると、そこにいたのはレミエルではなかった。
「…アスカはどこ?」
三日月に腰掛けた美しい女性は、か細い声でそう言った。
「うわ、喋った!?」
「…アスカがいなければ何も出来ない。契約も誓いも…何も…私の力を取り戻す為にも、お願い…アスカを探して…」
女性は謎めいた言葉を残し、光に包まれ消え去った。戸惑う一行の前に、レミエルが降臨する。
「長き道のりだった。よくぞここまで旅を続けたな。神子コレットよ!…我らからそなたに、祝福を与えよう」
「…はい」
天から舞い降りた四つの光が、コレットの身体を包み込んだ。
「神子よ。漸くそなたの旅も終わりを迎えようとしている。喜ぶが良い。今こそ救いの塔への道は開かれる!」
両手を広げ、レミエルは声を張り上げる。
「救いの塔で再生の祈りを捧げるのだ!その時、神子は天の階に足を乗せるであろう」
「レミエル様のお言葉のままに」
「最後の封印で待っている。我が娘…コレットよ。そこでそなたは、我と同じ天使となるのだ」
そう言うと、レミエルの周りを温かい光が包み込み、弾けた。残された天使の羽根がふわりふわりと宙を舞う。
仲間達の元へ戻って来たコレットに、リフィルが問い掛ける。
「…本当にいいの?コレット」
「…はい」
クレアは、胸一杯に広がる遣る瀬無さを感じることしか出来なかった。
入口付近の壁一面に設らえられた本棚から、漸く『ボルトマンの術書』を探し出した時、コレットがその場に崩れた。
「先生!コレットの天使疾患が…」
「分かりました。今日はここで休みましょう」
コレットはロイドの服の裾を掴み、大丈夫だ、と唇を動かした。が、一方のロイドは困惑の表情を浮かべるだけ。コレットは再度唇を動かし、意志を伝えようとする。すると、ロイドの表情が困惑から驚駭へと変わった。
「お前、もしかして…」
「…声を失ったのではないか」
「…!!」
クラトスの言葉に、コレットは震える手で喉元に触れる。必死に声を出そうと試みるが、動いたのはその唇だけだった。
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