背後からのクヴァルの声にコレットが振り向く。二人の悲鳴が重なった。
クヴァルが杖を降り下ろす。赤く見開かれた瞳がまるで血のようだった。
「衝破――」
「十文字!」
(この、声は…!)
二人が瞼を開けると、前後から剣を突き刺されているクヴァルがあった。
「ば、馬鹿な…あと一歩であったものを…!」
クヴァルは喀血し、ロイドとクラトスが剣を引き抜くと、そこから鮮血が溢れ出た。剣に付着した血を払い、鞘に納める。
「…やったぞ。母さんの仇を…倒したんだ!」
倒れたクヴァルに背を向け、ロイドは左手のエクスフィアに右手を翳す。
「ショコラの行方が分かったよ!」
その時、解除班の仲間達が次々と転送装置から現れた。しかし、一瞬にしてその表情が強張る。
不思議に思ったロイドが背後を振り返ると、杖を振り翳し、奇襲をかけようとするクヴァルの姿。
「危ないっ!!」
ロイドの目の前で、鮮やかな金糸が靡く。クヴァルは渾身の力を振り絞って、杖を降り下ろした。
「コレット…!?」
そのままロイドに倒れ掛かり、コレットは心配そうにロイドを見上げる。
「ロイド…だい、じょぶ…?」
「あ…ああ…だけど、お前…」
「私なら、だいじょぶ」
そう言ってコレットは微笑んだ。クヴァルが最後の力を振り絞って繰り出した一撃は深く、間違いなく皮膚を切り裂いたに違いないのに。
(…感覚が「ない」…)
そんなコレットの姿を見て、思わずクレアは目頭を押さえる。零れそうになる涙を堪え、治癒術を唱え始める。
「…許さねぇ!」
ロイドは再び鞘から剣を引き抜いて一気にクヴァルへ肉薄し、脇腹に剣を突き刺す。その横から飛び出した影が、一つ。
「…この、劣悪種がぁっ…!」
「その劣悪種の痛み…。…存分に味わえ。…地獄の業火でな」
クラトスは突き刺した剣を抉るように捻ると、断末魔の悲鳴が響き、クヴァルは絶命した。
to be continued...
(09.10.23.)
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