陣へ向かう途中、クレアは眠ってしまった。番をしていたクラトスにクレアを引き渡し、夜空を見上げてロイドは呟いた。
「エクスフィア…か」
(ここは…人間牧場?)
クレアはきょろきょろと辺りを見回す。
「危ないっ!!」
聞き覚えのある少女の声が耳に届いた時、クレアの目の前で金糸が靡く。
「…コレッ、ト…?」
思わず息を呑んだ。倒れ掛かって来たコレットの背に、生々しい傷跡が出来ていたから。血液が溢れて――止まらない。
「ロイド…だい、じょぶ…?」
「コ、レット…コレット…コレットっ!!」
クレアはコレットの身体を横たわせ、一心に治癒術を唱え始める。
「嫌、嫌だ、嫌っ…!」
そこで、夢の意識は途切れた。慌てて飛び起き、コレットの姿を探す。
「…コレット!」
「おはよう、クレア。そんなに慌てて…一体どしたの?」
良かった、いつものコレットだ――。クレアは額に浮かんだ汗を拭い取る。コレットは小首を傾げた。
すると、その後ろを赤色が通った。
「あっ!おはよう、ロイド!」
クレアが手を振ると、それに気付いたロイドが手を振り返す。
仲間達はそれぞれの決意を胸に、街の広場に集合した。
「さて、どうする?」
クラトスが問うと、ロイドは一度瞼を閉じ、大きく息を吸い込んでから、ゆっくりと瞼を開けた。
瞳に、迷いはなかった。
「一つだけ分かったことがある。…本当は母さんだって、きっともっと生きたかったに違いないってことだ」
そして左手のエクスフィアを、優しく撫でる。
「だからこの左手に宿る母さんの分まで、俺は生きてやる」
「それは、戦うということだな」
ロイドは仲間達を一人一人、真っ直ぐ見回す。
「ああ。そしてこの連鎖を断ち切る。母さんやマーブルさん、クレアの母さんみたいな人を増やさない為にも、コレットの世界再生を手伝う」
仲間達は各々のエクスフィアを眺め、胸に秘めていた想いを言葉にする。
「…ボクも、マーブルさんの分まで頑張る」
「私も。私も早く世界を再生する」
「ロイドのお母様の為にも、マーブルさんの為にも、私のお母様の為にも…頑張るよ」
「人は業が深い生き物。だからこそ、生きている限り、業を背負い続ける覚悟がいるのよ」
「生命は生命を犠牲にする、か。うまく言えないんだけど、エクスフィアを作る為に犠牲になった人達は、それとは違う気がするよ。違うからこそ、余計に許せないんだ」
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