「これ、マーブルさんの命なんだ…」


ジーニアスは要の紋ごとエクスフィアを取り外して掌に乗せ、それを眺めながら呟いた。
他の仲間達も各々のエクスフィアを掌に乗せて、ただひたすらにそれを眺める。…コレットとクラトスの二人を除いては。


(私のエクスフィアはお母様の命、なの…?)


クレアは混乱していた。エクスフィアは人間の身体から作られている…?そんな非人道的な行為、許される訳がない。


「こんなもの…こんなもの!」


ロイドがエクスフィアをきつく握り締め、拳を高く振り上げると、その腕をクラトスが掴んだ。


「…今エクスフィアを捨てて、この旅を無事に終わらせることが出来ると思っているのか?」

「…そうだよ!こいつがなけりゃ、俺達はただの弱い人間だ。そんなこと分かってる。でも…」


ロイドは辛そうに顔を歪め、声を荒らげる。


「確かにエクスフィアは、誰かの命を喰らってここに存在してるんだ!」


クラトスは、鋭い目付きでロイドの大きな鳶色を捉えた。


「それがどうした。犠牲になった者は好きで犠牲になった訳でも、エクスフィアとなった挙げ句、捨てられることを望んだ訳でもないだろう」

「私、自分がエクスフィアを使っていないから、こんなこと言うのかもしれない。でも、聞いて」


コレットは胸の前で手を組み、一呼吸置いてロイドを真っ直ぐ見据える。


「今エクスフィアを捨てれば、ディザイアンに殺されちゃうと思う。そしたら、これからも沢山の人達がエクスフィアに命を奪われちゃうんだよ」


短い沈黙の後に、ロイドは力を緩めた。すると、聢と握られていた腕が解放される。


「私、そんなの嫌だよ。何の為に世界再生の旅に出たのか、分からないもの」

「今はエクスフィアの犠牲になった人々の分まで、彼らの想いを背負って戦う必要があるはずだ」


ロイドは俯き、握ったエクスフィアの感触を確かめながら瞼を閉じる。


「…頼む。暫く一人で考えさせてくれ」


それだけ言うと、ロイドは雑木林の中へと姿を消した。


「…ロイド」


コレットは胸の前で手を組んだまま、悲しげに呟いた。


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