クヴァルは至極愉快そうに、ロイドの姿を見る。


「勘違いしてもらっては困りますね。アンナを殺したのは私ではない。君の父親なのですよ」

「嘘を吐くな!」


ロイドは渾身の力を振り絞って、クラトスの手を振り解こうとする。


「嘘ではありません。要の紋がないままエクスフィアを取り上げられ、アンナは怪物となった。それを君の父親が殺したのです。愚かだとは思いませんか」


クレアはその時、ロイドとは別の激しい殺気を感じた。


(クラ、トス…?)


熱り立つロイドを押さえながら、クラトスはクヴァルを睨み、地の底から轟くような声で言う。


「…死者を愚弄するのはやめろ」


クラトスの後ろにいるクレアは、その表情を伺うことは出来なかったが、今まで感じたことのない程に強く、クラトスの殺気を感じ取った。


「くくく…!所詮は二人共薄汚い人間、生きている価値もない蛆虫よ」

「…くっ!父さんと母さんを馬鹿にするな!」


クヴァルが顎で合図をすると、武器を構えたディザイアン達が一斉に襲いかかる。


「ここはあたしに任せな!」


しいなは懐から符を取り出し、呪文を唱える。






視界が真っ白になった。






「追いかけますか?」


ディザイアン達は跡形なく消えた一行に驚くが、すぐに冷静さを取り戻し、クヴァルに訊く。


「…放っておきなさい。神子の波動を辿れば、すぐに追い付くでしょう。それよりも、レネゲードを追いかけよ。奴等が盗んだエクスフィアを取り戻すのです」


部下達が散り散りに駆けて行くと、クヴァルはゆっくりとした足取りで、その場を後にした。














to be continued...

(09.10.12.)


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